マラソン大会での計測〜グロスタイムとネットタイム〜

マラソン大会でタイムを計測する方法はいろいろあり、手動から始まり、バーコード方式、ICチップ方式と変化してきました。

バーコード方式は、主に1980年代に行われていた計測方法で、ゼッケンにバーコードを印刷したものを使用して、ゴール地点で押されたストップウォッチのタイムと、ランナーのゼッケンのバーコードを読み取ったデータからタイムと順位を集計するというシステムでした。

この方式ではスタートの号砲からのタイムしか計測できませんでした。

1996年頃からはICチップ方式が普及し始め、シューズやゼッケンに装着したICチップて、スタート地点やゴール地点などに設置したのセンサーが通過したランナーのICチップのデータ取り込む方式となりました。

この方式により、スタートの号砲からのタイムしか計測に加え、ランナーがスタート地点やゴール地点の通過タイムが計測できるようになりました。

現在ではICチップを使用して計測され、タイムにはグロスタイムとネットタイムと呼ばれるタイムが使われています。グロスタイムとネットタイムとは何かわからない人もいると思いますので、タイムの計測について紹介します。

タイム計測

マラソン大会で計測されるタイムには一般的に、グロスタイムとネットタイムがあります。多くのマラソン大会でタイム計測はRCチップを使用しており、参加人数が多い大会でもネットタイムの計測ができるようになりました。では、グロスタイム、ネットタイムとはどのようなタイムなのでしょうか?

フルマラソンとハーフマラソンのタイマーの写真
タイマー

グロスタイム

スタートの号砲がなってからのタイムです。グロスタイムを公式記録としているため大会での順位はグロスタイムが使われています。そのため、スタート位置がスタートラインから遠い程ロスタイムが多くなります。大会の規模が大きい程参加ランナーが多いため、後方のランナーはよりスタートラインを通過するまでの時間も長くなります。

ストップウオッチのイラストです。
ストップウオッチ

ネットタイム

ネットタイムはスタートの号砲からではなく、スタートラインを越えた時から計測したタイムです。ネットタイムで順位がつけられる事は一般的にはありませんが、大会で走った距離での個人の記録です。スタートラインを越えるまでのロスタイムを無視するので、個人の走力のタイムとも言えます。

グロスタイム、ネットタイムどちらのタイムをランナー個人のタイムとするかは人それぞれと思います。しかし公式記録として申告するタイム グロスタイム ですので注意して下さい。

スタートラインから離れた場所からスタートする場合にはどうしてもスタートロスが多くなってしまいグロスタイムとネットタイムの差が大きくなってしまいます。

多くの大会では大会エントリー時に申告する完走予定時間によりスタート位置を決めていますので、速い人ほどスタート位置に近い場所から走れる事になります。より前からスタートするために走力に合わない場所からスタートすると、号砲直後の混戦で転んでしまったり、オーバーペースの走りになりますので申告タイムは走力に合った適正タイムを申告して下さい。

スタートロスについての注意

多くのマラソン大会では制限時間や、関門時間などが設けられています。この時間は号砲がなってからの時間です。つまりグロスタイムが基準になります。

都市型マラソンで1万人、2万人と参加ランナーないる大会では号砲がなってからスタート位置を通過するまで30分以上かかる大会もあります。この場合制限時間が6時間の大会である場合、号砲がなってからが6時間のため、ランナーがスタート位置を越えるまでの30分を引いた5時間30分で走り切らないといけません。

このスタート時におけるロスタイムを考慮してペース配分を考え目標タイムなどを設定して下さい。

マラソンのゴール地点の様子
ゴール

ウェーブスタートの導入

ここ数年日本国内のマラソン大会で、ウェーブスタートが増えてきています。

数年前までは、一斉スタートが主流で大規模マラソン大会ではスタートの問題点が多々ありました。
問題点としては、速度の異なるランナーが一斉にスタートするため転倒の危険性があったり、スタートの混雑によるタイムロスを挽回する為に無理なペースで走るランナーが多くなり、怪我等の危険性が高くなってしまってました。

これらの問題点を回避するために、ランナーをグループ化して時間をずらしてスタートするウェーブスタートが導入されるようになりました。

ウェーブスタートは、時差スタートともいいますが、ランナーをグループ化して時間をずらしてスタートするためスタート時の混雑が緩和し転倒の危険性や、怪我等の危険性を減らすことが可能となりました。
ウェーブスタートの記録は、ウェーブごとにグロスタイムとネットタイムを計測しています。

マラソンの公式記録


一般的にはマラソンの公式記録は、ネットタイムではなくグロスタイムを公認としてあつかわれています.

陸上競技審判ハンドブック2021-2022からの抜粋です。

道路競走競技会における留意点


道路競走競技会においては,グロスタイム(スタートの号砲からフィニッシュまでの時間)とネットタイム(スタートラ
ンを通過した時からフィニッシュまでの時間)が表示されることがよくあるが,公認記録となるのはグロスタイムのみである。
一方で,大規模大会ではスタート位置によって大幅にタイムが異なることから,世界的には,エリートを除く一般ランナ-に対してネットタイムを大会の正式タイムとして採用するレースが増えている状況である。

陸上競技審判ハンドブック2021-2022による公式記録の扱い(https://www.jaaf.or.jp/about/rule/handbook/)

マラソン大会のコースの距離の測り方

マラソン大会で使用されるコースはどのようにして測っているか気になったことはありませんか?

マラソン大会で計測される方法は、一般的に以下の2つの方法があります。

  1. タイムチップ :タイムチップは、ランナーの靴に取り付けられる小さな電子デバイスで、スタートラインを通過するとタイム計測が始まり、フィニッシュラインを通過するとタイム計測が終了します。この方法では、個々のランナーの正確なタイムが計測されます。また、スタートラインでの混雑を避けるため、タイムチップの測定は、ランナーのスタート時間に基づいて個別に行われます。
  2. スプリットタイム :スプリットタイムは、レースコース上の特定の地点で計測される時間です。例えば、10km、ハーフマラソンの終了地点、30km、40kmなどがあります。これらのスプリットタイムを使用することで、ランナーのレース中のタイムを正確に把握することができます。また、スプリットタイムの計測ポイントによって、個々のランナーのペースを比較することができます。

両方の方法を組み合わせることで、ランナーの正確なタイムを計測することができます。大会によっては、途中経過地点での給水や、スプリットタイムの発表、またはゴール地点での写真撮影など、追加のサービスが提供されることもあります。

実際の大会での計測

大会の規模、日本陸連公認のコースなど、大会によりコースの測り方は異なるとは思いますが、
日本陸上競技競技連盟の日本陸上競技連盟競技規則によると、マラソンの距離測定は”長距離競走路ならびに競歩路公認に関する細則”によって定められています。

距離測定の基本は”競技者が使用を許される道路の端より300mm離れた地点””彎曲した道路や曲折した道路では、その彎曲部分または曲折部分の頂点から300mm離れた地点を結んだ最短”を測るなど定められています。

距離の測定は、ワイヤーロープを用いる方法又は、自転車にカウンター計を取り付けて計測する方法でおこなわれます。

ICチップ方式によるタイム計測(記録計測)システム

多くのマラソン大会では、ICチップを利用したタイム計測が行われいますが、大会により、ゼッケンについたICチップによる計測や、靴にICチップを取り付けて計測する大会など、マラソン大会によりさまざまです。

計測の仕組みとしては、ランナー一人一人にICチップを付け、計測地点、ゴール地点に設置されたセンサーによりICチップを読み取りデータが取り込まれるという仕組みです。

ICチップには、アクティブタグ(電池あり)とパッシブタグ(電池なし)があり、ゼッケンに装着するICチップがアクティブタグ、シューズに装着するICチップがパッシブタグと区分しています。

本来、日本の陸上競技のルールでは、胴体(トルソー)がゴール地点ん通った時がゴールタイムとなるため、ゼッケンについたICチップによる計測でルールに沿った計測方法となります。

現在は、日本の陸上競技のルールも、ロードレースにおいてはシューズに付けるICチップも認められています。 

まとめ

マラソン大会で計測されるタイムには一般的に、グロスタイムとネットタイムがあり、グロスタイムはスタートの号砲がなってからのタイム、ネットタイムはスタートの号砲からではなく、スタートラインを越えた時から計測したタイムです。

グロスタイム、ネットタイムどちらのタイムを自己記録とするかは人それぞれですが、公式記録として申告するタイムはグロスタイムの場合が多いです。

スタートラインから離れた場所からスタートする場合にはどうしてもスタートロスが多くなってしまいグロスタイムとネットタイムの差が大きくなってしまいます。

マラソン大会でのタイムの測り方を理解したうえで、自己記録を計測し、自己記録の管理に努めましょう。

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