マラソントレーニング〜LSD〜
マラソンの練習では、さまざまなトレーニング方法があります。トレーニング内容によって得られる効果は異なるため、どのようなトレーニングをどのくらいすれば効率よくマラソンに活かせるかを考えてみます。
マラソントレーニング
マラソントレーニングにはさまざまな種類があります。
ロングランは持久力を養うために重要であり、フルマラソン距離に近い長い距離を走ることが特徴です。一方、インターバルトレーニングでは高強度の走行と休息を交互に行い、スピードと持久力を向上させます。また、テンポランではマラソンペースで一定の距離を走り、競技中のペース維持力を養います。
そのほかに、ヒルトレーニングは傾斜のある地形を利用し、筋力と爆発力を鍛えます。スピードワークでは短い距離を高速で走ることでスピードとパワーを向上させ、レストランでは高強度のトレーニングの後に完全な休息を取り、体の回復を促進します。
トレーニングプランを立てる際には、個々のランナーの目標や体力レベルに合わせた適切な計画を作成することが重要です。また、適度な休息やクロストレーニング(ランニング以外の運動)も取り入れることが推奨されます。マラソントレーニングは持久力やスピードを向上させるだけでなく、筋力やパワーの成長、回復力の向上にも役立ちます。さまざまな種類のトレーニングを組み合わせながら、効果的なトレーニングプランを作り上げましょう。
今回は、LSDのトレーニング方法と効果などについてまとめました。

マラソントレーニング〜LSD(ロングスローディスタンス)〜
LSDとはLong Slow Distanceの略で、
Longは長く、Slowはゆっくり、Distanceは距離、みちのりという意味です。つまり、LSDとは、「長くゆっくりとした道のり」という意味となります。
マラソンや長距離走の基礎体力を作るために欠かせないメニューで、初心者からベテランまで幅広いランナーにおすすめされています。特にフルマラソンを目指すランナーが積極的に行うといいとされるトレーニング方法でもあり、フルマラソンでよく言われる30kmの壁を乗り越えるためにもトレーニングとしてよく取り入れられています。
しかし、LSDといっても、ただ長く走ればいいというものではありません。正しく、LSDを行わなければ、せっかく長く走ってもトレーニングの効果が半減してしまいます。
LSDの効果とメリット
“Long Slow Distance"(LSD)は、運動やトレーニングで使われる用語で、長い時間をかけて、低強度で持続的な運動を行うことを指します。ランニングやサイクリング、水泳などの有酸素運動が含まれます。
LSDトレーニングを行うことによる効果は、筋持久力や心肺持久力の向上、脂肪燃焼、体のコントロール力の向上、筋力の増加、心血管の健康、ストレス軽減、リカバリー期間の短縮、精神的な耐性などがあります。
筋持久力、心肺持久力の向上
LSDには、筋持久力や心肺持久力を同時に上げる事ができるトレーニング方法です。そのためフルマラソンの30kmの壁を乗り越えるためのトレーニング方法としても有効です。筋肉の持久力が鍛えられ、毛細血管が発達して全身への酸素供給がスムーズになります。これにより、42.195kmのフルマラソンでも後半まで安定したペースで走り続けられる力がつきます。
筋持久力
筋持久力は筋力が持続できる能力を示しており、筋肉が繰り返し収縮し続けられる能力と言われています。ある一定の負荷でどの位の回数,どの位の時間を筋肉が繰り返し運動し続けられるかを表すものです。
筋持久力にを高めるには
筋持久力を高めるためのトレーニングの方法は、運動の繰り返し回数を多くすると高い効果が得られます。筋持久力は筋肉が長い時間、力を出し続ける能力で、この能力を高めるためには筋肉を動かし続ける反復運動が効果的と言われています。
反復運動を行うことで、筋肉に流れる血液量の増加し筋肉の毛細血管の発達します。その結果、血中の酸素運搬能力が高まりエネルギーの生産効率の向上し筋持久力が向上します。
筋持久力を高めるためのトレーニングのコツを紹介します.
- 継続して20~30回行える負荷を選ぶ
- 最低でも2~3セット行う行い、物足りない場合や大胸筋、大腿四頭筋などの大きな筋群を鍛えたい場合はセット数を増やす。
- テンポで動作でトレーニングすることで、血液が筋肉に流れ酸素が供給されます。
- セット間の休憩を30秒~1分と短くし完全に回復する前に継続して筋肉を動かすことで筋持久力を高めることができます。
心肺持久力
心肺持久力は、心臓や肺を中心とした全身の循環系の能力です。この心肺持久力の指標は最大酸素摂取量で表わすことができます。最大酸素摂取量は、マラソンなどのスポーツのトレーニングでよく聞く言葉です。
最大酸素摂取量はVO2maxともいい、簡単に言うと持久力や心肺能力を表す測定値の一つで、1分間あたり、体重1kgあたりに取り込める最大酸素の量を表します。言い換えると、酸素をどれだけ摂取するすることができるか?どれだけ消費できるかを表しています。
最大酸素摂取量について(リンク)
いろいろ効果があるといわれていますが、長時間体を動かし続けることで長時間のランニングに慣れる事と、精神面を鍛える事だと思います。
脂肪燃焼
LSDには脂肪燃焼効果があり体質を変えることができます。LSDは有酸素運動なので脂肪燃焼に効果的で、ゆっくり走り続けることで遅筋繊維がどんどん発達していきます。普段走らない人でもダイエットの方法としておススメです。ゆっくり走ることで脂肪を効率よくエネルギーに変えられる体質に変わり、レース中の「ガス欠」を防止と、スタミナが長持ちし、最後まで失速しにくくなります。
マラソンは、無駄な脂肪がついて太っている人や、スプリンター体質(速筋繊維の割合が多い)の人は不向きですが、LSDによりマラソンに有利な体質に変えることができます。
体のコントロール
LSDはただゆっくり長く走る事が求められますが、ただ走ればいいというわけではなく、体を上手くコントロールできるように考えながら走れるようになることを目指すと、より練習の効率があがります。
長く走る事で体調や気候などにより、
~このくらい走れば疲れ、このくらいで走ればいつまででも走れる~
という感覚が身についてきます。
体調に気候により、走る距離や速さを自在に操れる様になれば、レース中のコンディショニングが上手くで来る様にもなります。無理のないペースで走るため、フォームを意識しやすく、姿勢の乱れを修正できます。また、着地の衝撃が小さいため膝や足首への負担が減り、故障リスクも低減します。
LSDの効率的なトレーニング方法
トレーニングとしてLSDを効率よく行うにはいくつか注意する事があります。
ゆっくり走る
LSDは、Long Slow Distanceであるので長くゆっくりと走る事が最大の目標であり、ゆっくり走る事で体の動きもゆっくりとなり、腕や脚の動きを意識して走る事ができます。
ゆっくりのペースは?(ペースの目安と時間・距離)
トレーニングでのLSDはどの位の速さで走れば効率の良いトレーニングといえるのでしょうか。
一般的に、呼吸が乱れず、人と話しながら走れる速さがベストといわれています。一緒に走る人がいれば話しながら走ったり、景色を見ながら走ると自然とゆっくりペースとなり効率的なトレーニングとなると思います。最大心拍数の約65%、会話ができる程度のゆっくりペースが理想です。速すぎると効果が薄れ、遅すぎるとトレーニング効果が出にくいので、自分の心拍数を目安に調整しましょう。最初は1時間程度から始め、徐々に2時間30分以上を目指します。特にフルマラソンで4時間以内を目標とするランナーは、3~4時間のLSDを継続して行うことで、レース後半の粘り強さが身につきます。
走り方、フォーム
LSDの時の走り方でよく言われいるのが、フォームを意識して走るとあります。フォームを意識することも大切ですが、フォームを意識しすぎてランニングが嫌になったり、正しいと言われているフォームがあわない人もいます。
フォームは人それぞれで、体格や骨格によっても異なりますので、自分自身にあったフォームを見つける事も必要と考えます。
フォームは、長く走っていく中で、楽に走れる形が自然と出来ていくものと考えていますので、LSDはフォームを作るために走るものだと思います。ただむやみに走るだけでは効率が落ちてしまいますので、LSDの時に意識する最低限の事をいくつか紹介します。
LSDの時に意識する事
- 歩幅小さくする
- 目線を上げすぎない、下げすぎない
- お腹に軽く力を入れてへこませる意識を持つ
この3点だけを意識して走ると、LSDが効率的なトレーニングとなるのではないでしょうか。
腕の振りや足の動かし方と言った細かな事より、走る時の意識をするだけでLSDは効率的な練習になると思います。
最大酸素摂取量 (VO2max)
最大酸素摂取量は全身持久力の指標となるもので、運動中に体内に摂取できる単位時間当たりの酸素摂取量(l/分、㎖/㎏/分)の最大値です。
身体を動かすためのエネルギーをつくるためには酸素が必要です。この酸素を体内に取り込む量が
大きいほど、より高強度の運動をより長く行うことができます。
酸素を体内に取り込む量が酸素摂取量で、取り込む事が出来る最大量が最大酸素摂取量です。全身持久力を測る指標となります。
最大酸素摂取量の測定方法
最大酸素摂取量の測定方法には、直接法と間接法があります。最大酸素摂取量の測定は、研究やトレーニングの評価する際に広く用いられています。ただし、テストのための設備や機器が必要であり、運動能力や健康状態によっては負荷をかけた運動による危険性もあります。測定前には医師の診断や適切な準備が必要な場合もあります。
直接法
直接法は自転車エルゴメーターやトレッドミルなどを使用して、段階的に強度を上げて最大努力の運動中に採気された呼気ガスを分析し、1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量を算出します。
直接法での測定には、専用の機器や専門の測定者が必要となります。
間接法
間接法は心拍数や運動負荷などから最大酸素摂取量を推定します。
LSDとロングペース走の違い
LSD(ロングスローディスタンス)とロングペース走の違いは主に「走るペース(速度)」と「トレーニングの目的・強度」にあります。
LSDは「ゆっくり長く走る」ことを重視し、心肺機能や筋持久力の基礎を作るためのトレーニングです。ペースは非常にゆっくりで、会話ができるほどの余裕があるのが特徴。距離よりも「走る時間」を重視し、最低でも1時間半以上走ることを目標にします。LSDは怪我のリスクが低く、フォームの改善や脂肪燃焼にも効果的ですが、走力向上のためにはロングペース走のように少し負荷をかけた練習も必要です。
ロングペース走はLSDより約1kmあたり30秒速いペースで走り、運動強度を少し高めます。距離を基準に設定し、15km程度を目安に走ることが多いです。LSDの土台の上に負荷をかけることで、レースペースに近い走力を養います。
体感強度が最も大きな違いであり、LSDは「呼吸が楽で疲れにくいペース」、ロング走は「ややきついが持続可能なペース」で走ります。LSDは「持久力の土台作り」、ロングペース走は「その土台の上に負荷をかけて走力を伸ばす」トレーニングとして位置づけられています。目的やトレーニング段階に応じて使い分けることが効果的です。
ペース
LSD(ロングスローディスタンス) | ロングペース走 |
---|---|
ジョギングよりさらにゆっくり。会話ができるほどのゆったりペース(例:キロ7〜8分程度) | LSDより1kmあたり約30秒速いペース(例:LSDがキロ7分ならロング走はキロ6分30秒程度) |
強度
LSD(ロングスローディスタンス) | ロングペース走 |
---|---|
低強度。呼吸が楽で、心拍数は最大心拍数の約60〜70%程度。長時間の有酸素運動が目的 | LSDよりやや高強度。持久力向上に加え、レースペースに近い負荷をかけることで走力強化を目指す |
走る時間・距離
LSD(ロングスローディスタンス) | ロングペース走 |
---|---|
時間を基準に設定。最低1時間半〜2時間半程度、距離はあまり気にしない | 距離を基準に設定。15km程度を目安に走ることが多い |
目的
LSD(ロングスローディスタンス) | ロングペース走 |
---|---|
持久力の土台作り、毛細血管の発達、脂肪燃焼、怪我予防、正しいフォーム習得 | 持久力強化に加え、レースペースに近い負荷をかけて走力アップ。強化期のトレーニングとして重要 |
体感
LSD(ロングスローディスタンス) | ロングペース走 |
---|---|
楽に走れるペース。疲労感が少なく、長時間走り続けられる | LSDよりきつく感じるが、無理なく走れる強度。余裕があればペースアップも可能 |
まとめ
今回LSDについてまとめましたが、必要な練習、トレーニングはランナーそれぞれ異なりますので、絶対に良い、絶対に良くないなどはないと思います。トレーニングで大事なのは、走力を高めるために必要な練習がなにかを考える事と、楽しくランニングをする事だと思います。ランナーそれぞれ置かれた環境も違いますし、走る時間の確保も難しい人もいます。それぞれの環境の中で工夫して練習、トレーニングする事が必要と思います。また、練習、トレーニングの内容を考える事も、マラソンの楽しみではないでしょうか。
私自身の練習、トレーニングに有効と考える内容ですが、何か参考になる部分があればぜひトレーニングに、練習に取り入れてみて下さい。