ランニング中のケガ〜膝:半月板損傷編〜

膝関節の疾患には、発育期の膝関節障害、半月板損傷、靭帯損傷・捻挫、膝蓋大腿関節障害、関節症、炎症性疾患、非外傷性関節血症、腫瘍性疾患が主に考えられます。今回はランニング中にも起こる可能性のある膝の怪我のうち、半月板損傷についてまとめました。

膝関節の構造と半月板

膝関節

膝関節は、骨、軟骨、靱帯、筋肉、腱などから構成されています。
骨は大腿骨、脛骨、大腿骨、膝蓋骨の3つの骨から構成されており、大腿骨と脛骨の間で曲げ伸ばしができる蝶番関節となっています。
また、膝関節周囲には筋肉、腱、靭帯が付いており、膝関節の安定性に寄与しています。

関節の分類

関節の分類は、関節面の形により6つに分類されます。

球関節(多軸性) 、楕円関節(二軸性)、鞍関節(二軸性) 、蝶番関節(一軸性)、車軸関節(一軸性)、平面関節があります。

膝関節は、蝶番関節に分類されドアの蝶番のように一方向のみに動く関節です。蝶番関節は一方の骨の表面が凸曲面、もう一方の骨の凹曲面のくぼみに適合する関節のことをいいます。膝関節では凸曲面が大腿骨、凹曲面のくぼみが脛骨となります。

蝶番関節は、膝の他に肘関節や指節間関節などもあります。

半月板

膝関節は大腿骨、脛骨の間に関節を形成しており、それぞれの骨の表面には関節軟骨が被っておりいます。関節軟骨は、関節のスムーズな動きと荷重機能の役割を担っています。

半月板は、この膝関節の大腿骨、脛骨の軟骨の間に間にありるC型をした線維軟骨で、三日月状をしていることから半月板(半月)と呼ばれています。半月板は膝関節の内側、外側にそれぞれにあります。

内側のものを内側半月(medial meniscus:MM)、外側のものを外側半月(lateral meniscus:LM)といいます。半月板の辺縁部は厚みが厚く、中央部に向かう程薄くなる構造をしています。

生まれつき外側半月板の形状が半月ではなく、大きな円盤の形をした円板状のものがみられることもあり円板状半月板といいます。

円板状半月板は、構造的にも弱く損傷されやすいといわれています。

半月板の位置関係がわかるイラストです。半月板は膝関節にあり大腿骨と脛骨の間にあります。半月板は、関節でクッションのような働きをしています。
半月板

内側半月板(MM)と外側半月板(LM)

内側半月板(MM)の辺縁部は、内側側副靭帯(medial collateral ligament:MCL)深層と関節包内に存在する大腿半月靭帯、半月結合靭帯と結合しています。また、前方は前顆間区、後方は後顆間区で脛骨に付着しています。

内側半月前角rootの後方成分は、transverse meniscal ligamentに合流します。

外側半月板(LM)の辺縁部は、外側側副靭帯(Lateral collateral ligament:LCL)と結合はしていません。前方、後方は内側半月板と同じように前顆間区、後顆間区で脛骨に付着しています。

半月板の役割

半月板の役割は、膝にかかる体重の負荷を分散させ、関節への衝撃を吸収したりするクッションのような働きをしたり、関節の位置を安定させる働きをしています。

また、曲げ伸ばしの可動性を適切に保つことにも寄与しています。

半月板損傷の概要

半月板損傷は、半月板自体に亀裂が生じたり、欠けたりする事で痛みが発症する事で、年齢問わず若年から高齢者まで発症します。慢性化すると変形性膝関節症となる場合もあります。

主に、スポーツ時の膝関節への外傷で多く、膝をねじった時や異常な方向へ力が加わると起こりやすい損傷です。

膝の内側の半月板の損傷の内側半月板損傷と膝の外側の半月板の損傷の外側半月板損傷に分けられ、さらに断裂の形によっても分類されています。

半月板損傷の症状

半月板の亀裂や欠けたりして半月板損傷になった場合、運動時の痛みや膝の屈伸運動の時に引っかかり感、異常音などの症状が出現します。また、膝関節が伸びない、曲がらないなどの症状が出現する事もあります。

その他に、膝関節の屈伸運動の時に「ゴキッ」っと音が鳴ったり、膝がずれるような違和感が起こることもあります。

症状が悪化した場合には、膝に関節液や血液がたまりロッキング(膝が動かなくなる)状態になったり、激痛で歩けなくなることもあります。

これらの症状に伴い、膝に水が溜まることもあります。

半月板損傷の主な症状

  1. 膝の痛み:半月板損傷の最も一般的な症状は膝の痛みです。患部が炎症を起こし、痛みを引き起こします。特に、膝を伸ばした状態から曲げた際に、痛みを感じることが多いです。
  2. 膝の腫れ:損傷した半月板が炎症を起こすと、膝が腫れることがあります。膝が腫れることで、関節の可動域が制限されるため、日常生活での動作が制限されることがあります。
  3. 節々の音:損傷した半月板の破片が関節内を動くと、関節の異音(クラックやポップ音)が生じることがあります。異音がある場合は、痛みや腫れと共に、半月板損傷を疑う必要があります。
  4. 膝の安定性の低下:半月板は、膝関節の安定性を保つための役割を持っています。半月板が損傷すると、膝関節の安定性が低下し、膝が不安定になることがあります。このため、膝を曲げたり伸ばしたりする動作が制限されることがあります。
  5. 腰痛や足首の痛み:半月板の破片が膝関節外側に移動することがあります。この際に、腰痛や足首の痛みを感じることがあります。

ロッキングとは

半月板損傷の特徴的な症状にロッキングがあります。ロッキングは、激しい痛みとともに、膝が動かなくなってしまう状態をいいます。

突然の痛みと、膝がある角度から動かなくなる(膝がロックされたような状態)症状で、衝撃などにより半月板が膝関節の間に挟まった状態です。ロックした膝関節は、ゆっくり曲がる方向へ動かすとロックは解除されますが、痛みがひどい場合は早めに病院へ受診が必要となります。

半月板損傷の自己チェック

膝の健康自己チェック(東京女子医科大学東医療センター 整形外科・リウマチ科) からの引用ですが、以下の3つ症状が半月板損傷(断裂)したときによくある症状です。

自己チェックの参考にしてください

  • 膝を曲げたりのばしたりしていると、膝の中でゴリッゴリッ、コツ   コツ、ギュッギュッといった音がする
  • 階段をおりているときに、不意に膝の力がカクンと抜けてしまう
  • 和式トイレのあと、立ちあがるのが苦痛。正座も苦痛である

半月板損傷の分類

半月板損傷は発生原因による分類と、発生部位、損傷(断裂)の形による分類に分けられます。

発生原因は外傷性断裂、変性断裂、円板状半月を誘因とした断裂に分類されます。

損傷(断裂)の部位による分類は、膝の内側の半月板の損傷の内側半月板損傷と膝の外側の半月板の損傷の外側半月板損傷に分けられます。

発生原因による分類

損傷(断裂)の形による分類は、損傷(断裂)の形により、水平断裂、縦断裂、横断裂、バケツ柄状断裂、円盤状半月板断裂、フラップ状断裂に分類されます。

外傷性断裂

外傷性断裂は主に、スポーツが原因となる事が多く、サッカーやバスケットボールなどでジャンプ動作や切り返しの動作を反復するスポーツでの受傷が多く、特に、膝に体重が加わっている状態でのひねりや衝撃が原因となります。

若い人ではスポーツ中の外傷が原因のことが多いです。

変性断裂

変性断裂は、スポーツや仕事による膝、半月板へ慢性的な負荷が要因となり徐々に半月板が変性していきます。また、膝に負担をかける生活様式や肥満なども膝、半月板への負荷がかかり変性断裂の要因となります。さらに、加齢により、脚の筋力が低下したり疲労が蓄積する事で半月板が傷んだり、半月板のクッション性が低下が原因となります。

円板状半月

円板状半月を誘因とした断裂は、通常の半月板はご三日月のような形をしているのに対して、円板状半月板は、中央部も覆っており丸い厚みのある板状をしています。大きな外傷がなくても、半月板や関節軟骨を損傷しやすいと言われています。子供の半月板損傷の多くは円板状半月板が原因と言われています。

損傷(断裂)の部位による分類

膝の内側の半月板の損傷の内側半月板損傷と膝の外側の半月板の損傷の外側半月板損傷に分けられます。

  • 内側半月板損傷:膝の内側の半月板の損傷です。
  • 外側半月板損傷:膝の外側の半月板の損傷です。

損傷(断裂)の形による分類

半月板損傷の分類

スポーツ中の外傷による半月板損傷(外傷性)

急激な動きや無理な体制をとった時に膝関節に負荷がかかり損傷する事があります。また、半月板が、衝撃を吸収しきれないほど、膝を酷使したり、強く打ちつけたりして負荷がかかると、半月板は傷ついたり断裂します。

特に、膝関節に体重がかかっている状態で体を不意にひねったときに傷つきやすいです。

膝より下を固定した状態でねじる動作を繰り返すスポーツ(サッカーやバスケットボールなど)では半月板の損傷が多く報告されています。

ランニング中での半月板損傷(外傷性)

ランニング中では足を捻ったりする時だけではなく、アスファルト路面ばかりを走ったり、スピードトレーニングを多くした時、下り坂を走るときも半月板の損傷の可能性はあります。

加齢、筋力低下による半月板損傷(変性断裂)

加齢によって半月板は変性し、クッション性が低下します。半月板は変性は、加齢により水分量が低下してクッションとしての役割が衰えます。40歳以上から水分量が低下しますので注意が必要です。

半月板のクッション性が低下により、半月板は傷ついたり断裂しやすくなります。

まだ、膝周囲の筋肉が低下すると半月板に掛かる負荷が大きくなり、半月板が傷ついたり断裂しやすくなります。

日常生活での半月板損傷

半月板は加齢により傷つきやすいため、高齢者ではささいなケガや日常生活動作でも損傷する場合があります。

普段、脚を組んだり、横座りをしたりとき身体を歪めた姿勢を続けることより、半月板に負荷がかかり、半月板は傷ついたり断裂する事があります。階段の上り下り、ウオーキング、ハイキング、犬の散歩、段差や溝を飛び越える時の着地で半月板が傷ついたり断裂することもあります。

他に、先天性の問題で外側円板状半月板(幅広く分厚い半月板)が原因で関節内でひっかかりやすい事による半月板損傷や、加齢にともなう半月板の変性による半月板損傷もあります。

円板状半月板(discoid meniscus)

・半月板が厚く幅広い円板の形をしたもの。胎生期に中央部が吸収されずに遺残することによる。

  • 東洋人に多い。
  • 頻度は3-7%の人に見られる。
  • ほとんどは外側半月板で生じやすい。両側性が多い。

円板上半月板があると半月板の変性や断裂を生じやすく、膝の痛みやlockingの原因となります。また、小児期に全く症状がなく、成人になってはじめて症状が出てくることもあります。

断裂は水平断裂が多いと言われています。

円板状半月板の分類(Watabaneの分類)

  • 完全型(discoid):脛骨顆部関節面を完全に覆う。
  • 不完全型(semi-discoid):脛骨顆部関節面を不完全に覆う。
  • Wrisberg型:半月板後部が関節包へ付着せずWrisberg靭帯により大腿骨に付着する。非常に稀。

半月板損傷のチェック方法

McMurray test(マックマレーテスト)

McMurray testとは、膝を曲げながら捻じるテストで、膝を内反外旋、外反内旋して半月板が損傷しているかを見分ける指標とする検査です。

検査の方法

半月板損傷をテストしたい側の足(下腿遠位部)を片手で固定し、他方の手で膝関節の外側関節裂隙、内側関節裂隙をもち(外側関節裂隙を母指、内側関節裂隙を中指(環指)で固定)、股関節、膝関節の最大屈曲位(深屈曲位)にし、下腿を内方、外方へ捻ることでテストを行います。

内方、外方へ捻ることで、click音や疼痛が誘発されるかを確認し、誘発される場合は半月板損傷を疑います。

McMurray testの様子のイラストです。股関節、膝関節を屈曲し、下腿を内旋、外旋している様子のイラストです。
McMurray test

判定

内反外旋した時にclick音や疼痛が誘発された場合、内側半月板の損傷、外反内旋した時にclick音や疼痛が誘発された場合、外側半月板が損傷している可能性があります。

他に、深屈曲位でclick音や疼痛が誘発された場合は後節損傷、膝関節軽度屈曲位〜伸展位でclick音や疼痛が誘発された場合は前節損傷が疑われます。

Apley’s ConpreRession Test(アプレー圧迫テスト)

検査の方法

うつ伏せ(腹臥位)に寝て、半月板損傷をテストしたい側の膝関節を90°屈曲位にします。して、検者の一側の膝を大腿後面に乗せて固定する。テストしたい側の足首を両手で把持し下方へ牽引しながら、下腿を内転、外転さることでテストを行います。

膝に痛みが誘発されるかを確認し、誘発される場合は半月板損傷を疑います。

Apley's ConpreRession Test(アプレー圧迫テスト)の様子のイラストです。うつ伏せで膝関節を屈曲し、下腿を内旋、外旋している様子のイラストです。
Apley’s ConpreRession Test

判定

下腿を内旋した時に痛みが誘発される時は内側半月板 外旋した時に痛みが誘発される時は外側半月板の損傷を疑います。

半月板損傷の治療

損傷部位や範囲、損傷形態、受傷機転などによりますが多くは保存療法となりますが、観血療法として半月板切除術や半月板縫合術などもあります。

半月板損傷は、

  • 半月板の炎症
  • 半月板の損傷
  • 半月板の断裂

の3段階に分けられ、一般的に半月板の炎症や損傷の段階では手術はおこなわず保存的治療となります。断裂の段階となると、手術適用となる事が多いです。

 半月板損傷での保存療法、手術療法どちらとも、半月板へのストレスをいかに軽減させるかが重要となります。

半月板損傷の治療

半月板損傷の治療には主に、保存療法、手術による縫合術、手術による切除術の3つがあります。

保存療法

保存療法は、半月板の損傷箇所や程度によるますが、安静にしている事で損傷箇所が自然に癒合する場合があります。この場合は、サポーターなどをつけて固定し、場合によっては薬物療法などを併用し損傷箇所の自然癒合を期待します。治療効果の予想が難しいため治療の方向性を見極めが大切となります。
ロッキングを繰り返すような症状がある場合には保存療法ではなく他の治療法がいいと言われています。

手術による縫合術

外科的に半月板の損傷箇所を縫合する方法です。縫合術は比較的半月板の温存ができるため、変形性膝関節症へ移行が少ないと言われています。縫合術では手術後に長期間安静(膝に負荷をかけない、可動制限をする)が必要となりますが、比較的良い結果になると言われています。

手術による切除術

半月板損傷による疼痛の部分を切除のする方法です。切除術は疼痛などの症状の緩和には有効ですが、切除により荷重分散機能が低下するため膝関節の機能を低下する場合があります。縫合術と比べ安静(膝に負荷をかけない、可動制限をする)の期間は短くできます。予防のためには以下が重要

太ももの筋肉の強化

半月板損傷の予防

半月板損傷を予防するためには、膝周りの筋肉のストレッチや筋力をつけることを行うことです。

ストレッチや筋力をつけることで半月板の負担を減らすことができます。また、バランストレーニングなどを行うことで、運動するときに膝がぶれないような姿勢を習得でき、膝の捻挫を防ぐことが大切です。

まとめ

その他、膝周囲の怪我や損傷

2020-07-24マラソン 怪我マラソン,怪我,膝関節

Posted by takacyan