マラソンと不整脈

近年、マラソン中におこる心停止が問題となっており、マラソン大会ではAEDの設置や、メディカルランナー、ハートサポートランナーなどを常駐する大会も多くなってきました。

マラソン中の心停止が起こる割合については、米国では、10万人中0.54人(2000~2010年)というデータがあり、心停止した人の死亡率は71%との報告がされているとあります。

マラソン中の心停止の原因を調べてみると、肥大型心筋症から起こる不整脈や、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患といわれています。そこで、マラソン中の心停止の原因の一つとなる不整脈について調べてみました。

不整脈とは

不整脈とは、心臓の脈拍が正常とは異なるタイミングで起きるようになった状態のことで調律機能に異常がある心拍のことをいいます。たとえば脈がゆっくり打つや、速く打つ、または不規則に打つ状態を指します。

病院では、聴診や脈拍触診、心電図、心臓超音波検査などで確認されます。

不整脈を心拍数によって分類すると、脈がゆっくり打つ場合(1分間に50以下)を徐脈と、速く打つ場合(1分間に100以上)を頻脈に分類されます。他に、予定されていないタイミングで脈が生じる脈を期外収縮や、心拍異常を伴わない不整脈もあります。

健康な人にも生じる放置しておいてもいい不整脈から、命にかかわる不整脈もあります。

不整脈の原因

不整脈が起こる原因には、冠動脈の疾患や心臓の弁の障害、心不全、先天性の心疾患などの疾患の場合が多いです。

心臓が原因であること以外には、甲状腺の異常、肺の疾患、加齢、ストレス、睡眠不足、疲労などによるものもあります。

心臓は1日に約10万回の収縮、拡張を繰り返しており、時には規則正しくない不規則な動きをしてしまう場合もあるため、誰にでも不整脈は起こり得ます。

危険な不整脈

何もしていないときに急に意識がなくなりそうになる、失神する、脈拍が減り強い息切れを感じる、動悸が突然起こる、脈がバラバラで速く打つ、などの症状がある場合には一度検査を行うことをお勧めします。

主な危険な不整脈

  1. 頻脈性心房細動(Atrial Fibrillation, AFib)- 心房細動は、心臓の上部である心房が正常に動かなくなり、不規則な拍動を起こす状態です。この状態は、血栓や脳卒中のリスクを増加させることがあります。
  2. 完全房室ブロック(Complete Atrioventricular Block, CAVB)- 心臓の上部である心房から下部である心室に信号が伝わらないため、心室の拍動が制御されず、極端に遅くなります。これは、心拍数の低下や失神などの症状を引き起こすことがあります。
  3. 巨大型心室頻拍(Ventricular Tachycardia, VT)- 心臓の下部である心室が異常な速さで収縮する状態であり、一定時間以上続くと、心拍数が極端に上昇することがあります。この状態は、心臓停止や突然死のリスクを増加させることがあります。
  4. 心室細動(Ventricular Fibrillation, VF)- 心室が不規則な拍動を繰り返すため、心臓の収縮が停止する状態です。この状態は、心臓停止や突然死のリスクが非常に高いため、速やかな救急処置が必要です。

主な不整脈

徐脈(1分間に50以下)

正常リズムでは、洞結節が電気信号を送り、信号が心房内→房室結節→ヒス束・脚・プルキンエ線維→心室へ伝わり心室が収縮しますが、どこかに異常がある場合に徐脈となります。

徐脈になると、日常生活や運動に必要な酸素を体中に行き渡らせることができなくなり、息切れや、めまいなどの症状が出やすくなります。

自然な老化現象、洞不全症候群や 洞房ブロック、房室ブロック、遺伝性心異常などが原因となります。

頻脈(1分間に100以上)

生理的な頻脈として、運動、精神的興奮、発熱により脈が速くなる場合などがあります。

誘因ない頻脈の場合は、洞性頻脈、期外収縮、心房細動、心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動、房室ブロックなどが原因となります。

動悸や息切れ、胸痛、めまい、失神などの症状が出やすくなります。

期外収縮(不規則な脈)

心臓の中で規則的に電気信号を送る洞結節とは異なる場所から、少し早いタイミングで心臓に電気信号が送られる現象です。

30歳を超えると多くの人に認められ、年をとるにつれて増加します。

心房から出てくる期外収縮を心房性期外収縮、心室から出てくる期外収縮を心室性期外収縮といいます。

期外収縮は、のどや胸の不快感、動悸、キュッとした痛みなどの症状が現れる事があります。

連続して期外収縮が出現したときは一時的な血圧低下による、めまいや動悸の症状が現れることもあります。精神的ストレス、睡眠不足、疲労により、期外収縮は悪化しますので、規則正しい生活を送る事が大切です。

心房性期外収縮(PAC)

心房性期外収縮は心房から出てくる期外収縮です。

心室性期外収縮(PVC)

心室性期外収縮は、日常でもよくみられる不整脈のひとつで、基礎心疾患がない健常者にも多くみられ、頻度は年齢とともに増加します。

通常の健康診断で行う12誘導の心電図ではなく、24 時間心電図検査(ホルター心電図)を行うと、約40~95%の人にみられるとの報告もあるようです。

心室期外収縮を起こす原因として、ストレスやカフェインの摂取、飲酒、心臓を刺激する成分(プソイドエフェドリン等)を含むかぜ薬、花粉症の治療薬の服用などがあります。その他心臓の疾患(冠動脈疾患、心不全、心臓弁膜症など)により、心室の増大をもたらすような疾患がある場合も、心室期外収縮を起こす原因となります。

主な症状として、脈の飛びを感じたり、のどや胸の不快感、動悸、キュッとした痛みなどの症状が現れる事があります。

房室ブロック(脈の異常)

房室ブロックは、心臓の電気活動(興奮伝導)が阻害されている状態で、心房から心室への興奮伝導が部分的または完全に阻害される状態をいいます。興奮伝導の阻害により、心室のリズム(心室収縮)が遅くなったり、停止したりすることで全身に行き渡る血液が不安定になります。めまいや失神、息切れ、疲労感などの症状が現れることもあります。

房室ブロックには重症度によってⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度房室ブロックに分けられています。

Ⅰ度房室ブロック

Ⅰ度房室ブロックは興奮伝導が伝わるのに時間がかかったり、時々うまく伝わらない状態です。

Ⅱ度房室ブロック

Ⅱ度房室ブロックは、興奮伝導が伝わるのに時間がかかったり、時々うまく伝わらない状態です。

Ⅲ度房室ブロック

Ⅲ度房室ブロックは、完全房室ブロックともいい、興奮伝導が全く伝わらない状態です。失神や突然死につながる場合もあり、ペースメーカーを植込むなどの治療が必要となることもあります。

心拍の異常がない不正脈

早期興奮症候群(WPW症候群)

正常な心臓では,心房の興奮は房室結節とヒス束を通って心室へと 伝わります。しかし、早期興奮症候群(Wolff-Parkinson-White: WPW症候群)では,生まれつき余分なケント束という副伝導路があり種々の頻脈性の不整脈が起こります。

脚ブロック

心臓は電気刺激が伝導経路に沿って伝わる事で動きます。

洞房結節で発生した電気刺激が右心房と左心房に伝わり、収縮させます。次に房室結節に伝わり、刺激はヒス束を下に進んみ、右心室に向かう右脚と左心室に向かう左脚に分かれて伝わり心室を収縮させます。脚ブロックは、心臓の右脚、左脚を通過する電気刺激が、部分的に又は完全に遮断される伝導障害です。

右軸偏位と左軸偏位

心臓内の電気の流れは、通常は右上にある右房から下方の左室と右室に流れています。

電気の流れが右側に偏って流れている状態を右軸偏位といい、痩せている人、小さな子供にみられることがおおいです。

電気の流れが左側に偏って流れてい流状態を左軸偏位といい、比較的、肥満の人や妊婦、高齢者に見られる場合が多いです。また、高血圧などにより左室肥大場合に見られることもあります。

右軸偏位や左軸偏位の所見が単独の場合には問題となる事はありませんが、他になんらかの所見がある場合には、総合的な判断することが必要です。

AED(自動体外式除細動器)

AED(自動体外式除細動器)は、AEDは、Automated External Defibrillatorの頭文字をとったもので、自動体外式除細動器といいます。心室細動にたいして心臓に電気ショックを与え正常なリズムに戻すための医療機器で、心電図を自動で解析し、電気ショックが必要な場合のみ電気ショックを行う機器です。

2004年7月から医療従事者ではない一般市民も使用できるようになり、公共施設や空港、駅、スポーツクラブ、学校、企業やマラソン大会でも目に触れることが多くなってきました。

AEDはの操作は音声でガイドしてくれるため、簡単に使用することができます。

まとめ

不整脈には病気に由来するものと、生理的なものがあります。運動や精神的興奮、発熱により脈が速くなる生理的な頻脈は問題ありませんが、明らかな誘因がない頻脈や、不規則な脈が増えた場合、徐脈の場合には注意が必要です。

めもちょう〜人の体〜Byランナーたかちゃん

2020-04-21健康マラソン,健康

Posted by takacyan