ランニングと手足のしびれ
概要
運動誘発性しびれ(Exercise-Induced Numbness)
ランニングや他の運動中に、神経や血管に圧力がかかることが原因で、手足がしびれることがあります。これを運動誘発性のしびれといい、長時間のランニングや特定の姿勢で発生しやすいです。運動時におこる神経や血管の圧迫や締め付けは、ウェアやシューズによる圧迫や締め付けが多く、ちょっとした対策で手足のしびれは改善します。
その他の原因として、運動中の手足の血流低下の場合もあります。運動時の血液の供給が手足よりも他の部位が優先される場合では、手足の血流低下によりしびれが現れることがあります。この場合のしびれは、運動を続けているうちに改善されることが多いです。
ハンガーノック(hanger knock)による手足のしびれ
ハンガーノックは、長時間の運動により極度の低血糖状態に陥ることで、エネルギー不足によって身体が動かなくなってしまう状態です。
ハンガーノック=エネルギー不足=身体のガス欠です。
主な症状として、喉の渇き、突然の疲労感、動悸、息切れ、めまい、吐き気、頭痛、手足、指先のしびれ、顔面蒼白、意識が遠のくなどがあります。
ハンガーノックの症状
- 初期症状:軽い空腹感、疲労感、倦怠感
- 中期症状:強い空腹感、喉が乾く、足に力が入らなくなる、ふらつきを感じる
- 後期症状:強い喉の渇き、指先の痺れ、めまい、動悸、冷や汗、強い疲労感に襲われる
- 重症症状:意識障害(死に至る場合もある)
です。
ハンガーノックは極度の低血糖状態をいい、エネルギー源である糖質を消費しきってしまった状態です。糖質は体内ではグリコーゲンとなり、肝臓や筋肉に蓄えられていますが、このグリコーゲンを使いきると、筋肉のたんぱく質を代用しエネルギーとします。この状態は、筋肉に負荷がかるため、エネルギー消費をしないように突如として筋肉が動かなくなります。
これがハンガーノックです。
ハンガーノックを防ぐポイント
- ランニング等の運動をする2~3時間前に炭水化物を食べる
- ランニング等の運動中にこまめに糖質・水分補給を行う
- 違和感が表れたらすぐに休憩する
フルマラソンでエネルギー補給をしなかった場合、約3時間程度でハンガーノックとなるといわれています。
疲労による手足のしびれ
長期間の過度なトレーニングにより、運動能力の低下や、疲労の回復がしない状態となってしまう場合もあります。主に、激しい過度な練習が続いた時や、大会に頻繁に出場して過剰な負荷がかった状態になる時、睡眠不足や減量による栄養不足の状態の時、かぜなどで体力が落ちている時にランニングを行うと、日常生活では自覚症状がなくても、練習についていけなくなったり、記録が落ちたりすします。
症状が重くなると、動悸、息切れ、食欲の低下、手足のしびれ、立ちくらみ、微熱などの症状が出てきます。
水分の不足による手足のしびれ
長時間のランニングや運動で、たくさん汗をかき水分の補給しだけを行った(塩分の補給はなし)場合では、脱水となり手足に熱けいれんが引き起こされることがあります。
汗は体温調節を行っていますが、大量に汗をかくと体内の水分だけではなく、カリウム、ナトリウムなどの電解質(塩分)も不足してしまいます。カリウム、ナトリウムなどの電解質が足りなくなると体温が下がりにくくなります。また、電解質は筋肉の動きに関係していて、不足すると、筋肉がスムーズに収縮できなくなり、脱力感・手足のしびれ・不整脈などを感じるようになります。
脱水状態で水分だけの補給では、血液中の電解質濃度(塩分濃度)が下がります。こまめに水分補給を行っていても塩分の補給を行わなければ塩分濃度が下がり、手足にしびれなどの症状を感じるようになります。
水分・塩分補給におすすめのもの
水分・塩分補給におすすめのものとして
- スポーツドリンク
- 塩分を含む飴・タブレット
- ゼリー飲料
- 塩こんぶ
- 梅干し
などがあります。
気温が高い時のランニングによる手足のしびれ
気温が低い時のランニングによる手足のしびれ
気温が低い時にランニングしたときに手足の指先にしびれや痛みを感じたり、皮膚の色が白、青紫に変わったりすることがあります。
寒さで筋肉が固くなり神経を圧迫してしまい、手足のしびれが起こったり、固くなった筋肉の影響で血流が悪くなり手足のしびれが起こります。また、寒さの刺激により血管が縮こまり、一時的に指先など抹消に血が流れなくなり、指先の色が悪くなる、指先がしびれる、冷え、痛み、感覚が無くなる、締め付けられるような感じがするなどの症状が起こることもあります。この症状をレイノー症候群(レイノー病やレイノー現象とも言います)といいます。
全身の病気による手足のしびれ
全身の病気によるものには、糖尿病があります。
その他に、キアリ奇形、脊髄空洞症、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多発単神経炎、ギランバレー症候群、中心性頸髄損傷などがあります。
ランニングで手のしびれの主な原因
ランニングで足のしびれの主な原因
- 足底筋膜炎
- 外反母趾
- 血流の問題
- モートン病
- 神経の問題
- 糖尿病
その他の手のしびれの原因
- 頸椎が原因のしびれ
- 頸椎症性脊髄症
- 頸部神経根症
- 手根管症候群
- 前骨間神経症候群(回内筋症候群)
- 後骨間神経麻痺(回外筋症候群)
- 肘部管症候群
- ギオン管症候群
- 橈骨神経麻痺
- 胸郭出口症候群
- 指神経麻痺
- Bowlers thum
- グロームス腫瘍
- 上腕骨外側上顆炎
- 肩甲背神経絞扼障害
- 肩甲上神経麻痺
- 四辺形間隙症候群(腋窩神経麻痺)
- 長胸神経麻痺
手根管症候群
手根管症候群は、手・手関節にある手根管と呼ばれるトンネル内で、正中神経が圧迫された状態で、手関節の運動が加わって生じます。手・手関節にある手根管は、手根骨と横手根靱帯(屈筋支帯)で囲まれたトンネルで、このトンネルの中には正中神経と9本の腱が走行しています。
9本の腱は、滑膜性の腱鞘を伴っており、腱鞘炎やケガなどにより、腱鞘がむくむと手根管内で正中神経が圧迫されて手根管症候群を発症します。
※正中神経の走行は、上腕内側→肘窩→前腕→手根管→手です。
主な症状として、初期症状は、示指、中指のしびれや痛み、重症化すると、正中神経の支配領域である母指から環指(母指側)の指のしびれです。
特に、明け方に手がしびれや痛みが現れます。
手根管症候群の原因となるものは、手首の骨折や脱臼、腱鞘炎、関節リウマチ、痛風、神経鞘腫、線維腫、過誤腫、ガングリオン、血管腫、脂肪腫、アミロイドーシス、糖尿病、先端肥大症、虫様筋肥大、筋肉奇形、正中動脈遺残などです。
ギオン管症候群
ギオン管症候群は、手の小指側が痺れる疾患で、尺骨神経の絞扼障害です。尺骨神経が圧迫を受ける部位は大きく肘と掌の2箇所あります。肘での圧迫による障害は、肘部管症候群といい、掌での圧迫による障害はギオン管症候群といいます。尺骨神経の圧迫による障害は、小指の掌側で起こります。
ギオン菅は、手根骨の有鈎骨と豆状骨の間、横手根靭帯(屈筋支帯)と豆状有鉤靭帯の上にあります。
尺骨神経の感覚神経が障害されると、小指と薬指の小指側半分にシビレ、痛みが起こります。
肘部菅症候群
その他の足のしびれの原因
- 大腿外側皮神経痛
- 坐骨神経痛
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 梨状筋症候群
- 大腿神経絞扼障害
- 閉鎖神経症候群
- ハンター管症候群(伏在神経麻痺)
- 腓骨神経麻痺
- 腓腹神経麻痺
- 浅腓骨神経麻痺
- 足根洞症候群
- 前足根管症候群
- モートン病
- 足根管症候群
- むずむず足症候群
- 多発神経炎
- 糖尿病性神経障害
- 脚気