膝の痛み〜変形性膝関節症〜

膝が傷む原因には、運動による膝への過剰な負担や、加齢による半月板や軟骨の劣化、肥満体形の方の膝への負荷などがあります。

主に、半月板損傷、膝周囲の靱帯損傷、オスグッド病、スポーツによる膝の慢性障害、膝蓋骨脱臼、膝離断性骨軟骨炎、変形性膝関節症、腓骨神経麻痺、O脚・X脚、膝関節捻挫などがあります。

今回は、変形性膝関節症について詳しく紹介します。

変形性膝関節症は、加齢やオーバーワーク、外傷や炎症の後遺症などにより、膝への衝撃を和らげる軟骨が擦り減り、膝の骨同士が衝突して膝に痛みが出る症状です。

変形性膝関節症の概要

変形性膝関節症は、なんらかの原因で、膝の関節軟骨がすり減ったり、弾力がなくなることにより関節が変形してしまうことをいいます。男性よりも女性に多く、さらに高齢者になるほど変形性膝関節症の罹患率は高くなります。一般的に変形性膝関節症では、膝に負担がかかる日常生活を見直すよう指導されたり、運動療法により筋肉を鍛えるよう指導されます。

膝関節の構造

膝関節は、大腿骨、脛骨、膝蓋骨で構成されており、脛骨の外側には腓骨が併走して存在しています。
関節内の骨の表面は軟骨でおおわれていて、大腿骨と脛骨がぶつからないように骨と骨の間には半月板があります。また、関節部分は関節包でおおわれ内部には関節液で満たされています。
関節液は関節をスムーズに動かすために潤滑油のような働きをします。

(関節液は関節包の内側の滑膜から分泌されています。)

膝の曲がる角度は、最大で約150度です。しゃがむ時には約120度曲がります。歩くときや走る時には約60度曲がります。

正常の膝関節のイラストです。大腿骨、脛骨、軟骨、滑膜の位置関係がわかるイラストです。
正常な膝関節

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症の主な原因として、加齢や肥満、筋肉の衰え、O脚、X脚、膝関節の損傷などがあります。

加齢により骨の表面の軟骨がすり減ったり、肥満や筋肉の衰えにより膝への負担が大きくなり軟骨がすり減りまる。軟骨がすり減ると、骨同士がぶつかるり膝に強い痛みを生じるようになります。

他に外傷により靭帯の損傷や、半月板の損傷が原因となることもあります。

変形性膝関節症の症状

主な症状は運動時の膝痛です。

歩行開始時や階段昇降時の痛み、関節の腫れ(関節腫脹)、関節変形、関節の可動域の障害、筋力低下などの症状が現れます。

変形性膝関節症の初期

変形性膝関節症の初期の段階では、骨の表面の軟骨にひびが入ったり、軟骨がすり減り、痛みや炎症をおこします。軟骨のひびは外傷や強い衝撃によることが多く、ひびが入ることで衝撃を吸収する力が弱まり痛みや炎症をおこします。また、軟骨のすり減りも衝撃を吸収する力が弱まり痛みや炎症をおこします。

この時、関節包の内側にある滑膜が厚くなり関節液が異常に分泌されて関節内に貯まり、腫れたり痛みの増強がおこります。また関節の動きが悪くなることもあります。

初期の症状

変形性膝関節症の初期では、朝起きた時に膝に違和感を感じることが多いと言われています。
起床時の第一歩のときの「膝の違和感」です。
この時の違和感は、痛みとはいえない普段とは異なる感覚で、動いたときにのみの違和感です。
動かないで休むと違和感や痛みがなくなる場合がほとんどです。

また、歩きはじめや走りはじめなどの動作を開始時する時に痛みが発症し休むと痛みがとれる症状の時もあります。一時的な痛みだけで軽快する場合もありますが、症状が悪化すると、階段の昇降や正座が困難となる位の痛みが現れるようになります。

変形性膝関節症の初期の段階のイラストです。軟骨がすり減り関節の間が狭くなっている様子が分かります。また関節の中に水が溜まった様子のイラストです。
変形性質関節症(初期)
  • 軟骨がすり減り関節の隙間が狭くなっています。

変形性膝関節症の中期

変形性膝関節症の初期の段階から進行期になると、軟骨がとても薄くなったり、なくなったりして骨同士がぶつかりやすくなります。骨同士がぶつかることによって、骨が削られ棘状になり膝の変形が目立つようになっていきます。また滑膜は更に肥厚していきます。

中期の症状

初期症状を放置して症状が悪化していく場合には、痛みの頻度が多くなったり、膝の可動域が狭くなる(完全に曲がりきらない、伸びきらない)状態になり、しゃがむ動作や、正座などの動作が苦痛になってきます。
また、階段の上り下りがつらくなります。特に下りがつらくなります。

その他に、炎症が生じて膝の周辺が腫れる、熱をもつ、膝に水が溜まるようになります。

さらに悪化すると、何もしていない時、安静時にも痛みが継続するようになります。また、膝の変形がかわり、膝に力のかかる動きをするとコツコツ、ゴリゴリなどの異音を自覚するようになります。

変形性膝関節症の進行期のイラストです。軟骨が薄くなり骨同士がぶつかり骨が変形しています。骨棘になっているイラストです。
変形性膝関節症(進行期)
  • 初期の状態よりも軟骨がすり減り、関節のふちから骨棘が出始めます。

変形性膝関節症の中期以降

変形性膝関節症の中期以降では、普段の生活においても支障が出るくらいの痛みとなります。軟骨がなくなり骨が直接ぶつかり激しい痛みがおこります。

変形性膝関節症の中期以降の症状

さらに放置し症状が悪化すると、関節軟骨がほとんどなくなり、骨同士が直接ぶつかるようになり、日常生活に支障が起こるほどの痛みになります。
普通に歩いたり、座ったり、しゃがんだりする日常生活に支障が出るようになり、仕事や買い物、旅行などの活動が苦痛になり行動範囲、活動範囲が狭くなります。

家の外に出ない生活が続くと、精神的な負担も大きくなり認知症などの痴呆症状が現れる人もいます。また、骨の変形が目立つようになり、関節の変形によりO脚(ガニ股)となります。

軟骨がなくなり骨が直接ぶつかり激しい痛みが発生します。

変形性膝関節症の予防

ランニングでの変形性膝関節症の予防方法

ランニングでの着地における、膝の負荷を減らす事が一番の予防法です。膝の負荷を減らす方法としては、体重増加を防ぐ事、膝周囲の筋肉をつける事です。その他に、膝に負担をかけないようなランニングフォームを身につけてランニングを行う事です。

体重増加は単に体が重くなれば膝にかかる負担も多くなるため、体重を減らす事も効果があります。

膝の周囲の筋肉をつける事は、膝の筋肉はランニングでの着地の衝撃を吸収してくれるため膝への負担が軽減されます。

膝に負担をかけないようなランニングフォームは、膝が内側に入らないようし膝に負担をかけないようなランニングフォームです。

日常生活での変形性膝関節症の予防方法

日常生活で変形性膝関節症を予防するには、大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)を鍛えることや、肥満がある場合にはダイエットをするなどがあります。普段の生活の上では、正座をさけたり、和式トイレではなく洋式トイレを使用するなどがあります。また、膝を冷やすと血行が悪くなるため、温めて血行を良くするなどがあります。

大腿四頭筋

大腿四頭筋は、大腿直筋、内側広筋、中間広筋、外側広筋の4つで構成されています。

 大腿四頭筋は、膝関節を支える役割を担っています。膝の内側を内側広筋で支えており、内側広筋が弱くなると内側半月板や内側側副靭帯など膝の内側を痛めやすくなります。

 比較的外側広筋はトレーニングで強くなりやすく、内側広筋は早く衰えやすい為、膝痛の予防の為には内側広筋を鍛える事を意識するといいです。

大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)のトレーニング方法

大腿四頭筋(ふとももの前の筋肉)のトレーニング方法を紹介します。個人の体力、年齢、性別を考慮してトレーニングを選んでください。あくまで、トレーニングの紹介ですので必要以上に無理をしないようにしてください。

  • スクワット
  • シシースクワット
  • レッグレイズ
  • ブルガリアンスクワット
  • フロントブリッジ(プランク)
  • レッグエクステンション

などがあります。

大腿直筋のトレーニング

大腿直筋を鍛えるメリット

大腿直筋は日常動作や走る、跳ぶなどの運動全般に関係しています。大腿直筋を鍛えると運動機能が高まりや、疲れにくくなったり、ランニングなどのパフォーマンスの向上が期待できます。

また、大腿直筋は全身の筋肉のなかで大きな筋肉で代謝量が大きくなります。筋肉を鍛えることで代謝力の向上も期待できます。

代謝力(基礎代謝)が上がると、脂肪燃焼効率が上がり、筋肉が付きやすく、太りにくい体となります。

スクワット

スクワットは全身運動で、全身の筋肉を使うため、消費するカロリーも大きく、ダイエットにも有効です。

スクワットで鍛えられる主な筋肉

  • 大臀筋
  • 大腿四頭筋
  • ハムストリング

スクワットで鍛えられる、大臀筋や大腿四頭筋、ハムストリングなどは、競技のパフォーマンスアップに必要な筋肉です。また、腹筋・背筋・ふくらはぎなどの筋肉も鍛えられます。

シシースクワット

シシースクワットは大腿四頭筋を鍛ることができるトレーニングです。
通常のスクワットは下半身全体を鍛えることを目的としていますが、シシースクワットは大腿四頭筋をメインに鍛えるトレーニングです。

シシースクワットで鍛えられる主な筋肉

  • 大腿四頭筋

大腿四頭筋は大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋で、人体で最も強くて大きい筋肉です。シシースクワットで大腿四頭筋を鍛えると脚力が向上、基礎代謝の向上が期待できます。

ストレッチをすることで痛みが悪化してしまう理由

痛みがある場合、ストレッチを行う人は多くいると思います。
ストレッチは正しい方法、正しいタイミングで行うととても効果はありますが、間違った方法、タイミングで行うと痛みが悪化してしまうことがあります。

ストレッチで痛みが悪化してしまう3つの理由。

1、痛いところまで伸ばしすぎてしまう。

筋肉は縮む伸びるを繰り返すこと動かすことができます。筋肉の滑りが悪くなり縮んだ筋肉を伸ばすストレッチはとても効果がありますが、
痛いと感じるところまで伸ばしてしまうと縮んだ時にかたまってしまいます。
一度筋肉が伸びすぎたあとに縮んだ筋肉はがちがちに固まってしまい痛みの原因になります。
ストレッチで筋肉を伸ばすときには、伸ばして気持ちいいと感じるところで15~20秒静止して緩めると効果は発揮されます。

2、ストレッチをする時間、タイミングが悪い

筋肉ががちがちに縮んでしまっている時には伸ばそうとすると痛みが生じます。
特に、朝、座りっぱなしなど体を動かしてない時は筋肉が固まってしまっているため、この時急にストレッチを行うと痛みを生じることがあります。
この時筋肉はがちがちに固まっている状態から無理に伸ばそうとするため炎症を起こし痛みが発生します。
ストレッチを行う時間、タイミングは、夜やお風呂上がり、体を少し動かしたあとに筋肉が温まって柔らかくなってから行うと効果が発揮されます。

3、ストレッチの方法が間違っている

伸ばしたい筋肉を伸ばそうとして間違ったフォーム、形で行うと、目的の筋肉を伸ばすことができてないことが多く、ストレッチの効果はありません

以上、ストレッチで痛みが悪化してしまう3つの理由を紹介しました。
正しい時間、タイミング、方法でストレッチを行わないと、ストレッチの効果はありませんので、正しい知識を持ってストレッチを行いましょう。

変形性膝関節症とうまく付き合うには

変形性膝関節症は基本的には保存的療法で経過を診ていきます。

初期の変形性膝関節症であれば、生活環境、生活習慣の改善と運動療法だけで十分である事が多いです。

生活環境、生活習慣の改善では、正座をする生活より椅手に座る生活にしたり、重い荷物を持つことや、長時間立ち続ける事を避けたりするように心がける事です。また、適度な運動で肥満を解消する事で膝への負担が減ります。大腿四頭筋を鍛える事でも膝の負担を減らす事が期待できます。

痛みが続き保存療法で改善しない場合には、薬物療法、物理原法、装具療法などを行います。

薬物療法は、非ステロイド系消炎鎮痛剤内服やヒアルロン酸の関節内注入

物理原法は、ホットパックなどにより患部をあたためるなど

装具療法は足底の装具や膝の装具で患部の負担を減らすなど

さらに痛みが続く場合には手術により膝の変形の矯正や、人工材料で関節を再建して、痛みを和らげる場合もあります。

変形性膝関節症の治療方法

変形性膝関節症の治療の方法は、まずは保存的治療を行います。

保存的治療とは、生活指導、運動療法、物理療法、装具療法、薬物療法などです。
生活指導では、体重減少や履いている靴の見直しを行い、膝の負担を軽減をします。

運動療法

運動療法では、自転車こぎや水中歩行など膝に負担をかけない運動や、柔軟性や筋力アップに効果のある運動を行います。

物理療法

物理療法では、超音波治療やホットパック、電気刺激などをします。

装具療法

装具療法では、膝のサポーターや足底板、杖を使用して膝関節の負担軽減をおこないます。

薬物療法

薬物療法では、消炎鎮痛剤の投与、ヒアルロン酸の関節内注射などがあります。

ガイドラインに基づいた痛みを緩和する運動

日本整形外科学会の定めた「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告 OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン変形性膝関節症ガイドライン」のよると、有酸素運動、筋力強化訓練、可動域訓練が膝の痛みを緩和する運動として紹介しています。

ガイドラインに基づいた有酸素運動

ガイドラインに基づいた筋力強化訓練

ガイドラインに基づいた可動域訓練

まとめ

変形性膝関節症は、加齢やオーバーワーク、外傷や炎症の後遺症などにより、膝への衝撃を和らげる軟骨が擦り減り、膝の骨同士が衝突して膝に痛みが出る症状です。

比較的、男性よりも女性に多く、若い人より高齢者になるほど罹患率は高くなります。

主な症状は運動時の膝痛で、特に歩行開始時や階段昇降時の痛み、関節の腫れ、関節変形、関節の可動域の障害、筋力低下などの症状が現れます。

予防として、、大腿四頭筋を鍛えることや、ダイエットなどで膝への負担を減らすことが重要です。

膝の怪我

2020-07-14マラソン 怪我マラソン,怪我,膝関節

Posted by takacyan