ランニング中の腰痛〜まとめ〜

腰痛を訴える人は日本人には多く、身体症状の中で最も多い体の痛みと言われています。約80%の人が一生に一度は腰痛を訴えていると報告もされています。

腰痛の原因の約70%は原因不明で、約5%は椎間板ヘルニアや脊椎圧迫骨折、約3%は脊柱管狭窄症や脊椎すべり症、それ以下の割合で悪性腫瘍、化膿性脊椎炎と言われています。

腰痛は、姿勢、動きなどにより痛みを誘発している場合もあり、知らず知らずのうちに腰に負担をかけている事もあるため、痛みを取り除く治療だけでなく、予防もとても大切です。

今回、運動、特にマラソンやランニングの時に起こる腰椎の原因を、筋肉、椎間板、椎体、椎間板間(終板)、椎間関節、椎体などの視点から考え、痛みの対策や予防などについて説明します。

腰が痛む時と症状

腰痛の多くは急を要さないのもがほとんどですが、痛み方、痛む場所によっては放置しておくと危険となる場合があります。

腰が痛む場所、痛むとき、ほかの症状を自分自身で整理しておくことも必要です。よくある症状、痛む時のリストを作成しましたので参考にどんな症状か、どんなとき痛むか自分で考えてみてください。

  • じっとしていても痛むのか
  • 体を動かしたときだけ痛むのか
  • 腰だけが痛むのか
  • 腰以外にも痛む場所が痛むのか
  • 痛みだけか
  • 痛み以外にしびれも出現しているのか
  • しびれがある場合は足のしびれか
  • しびれがある場合はおしりもしびれるか

などが、主な症状、痛む時です。

じっとしていても痛む時には、重大な脊椎の病気や内臓の病気の可能性がありますので注意が必要で、医療機関への受診が必要となる場合もあります。

腰痛の人のイラストです
腰痛

腰痛(痛み方による分類)

急性腰痛

急性腰痛は、急激な腰痛をいいます。激しい運動や重い物を持ち上げたときに発生することが多く、腰椎のヘルニア、筋肉の痛み、骨折、腎臓の疾患などが原因となります。

急性腰痛の主な症状には、腰の痛みやこわばり、しびれ、筋肉の痙攣などがあります。このような症状が数週間以上続く場合は、医療機関に受診をおすすめします。

慢性腰痛

慢性腰痛は、通常、12週間以上続く持続的な腰の痛みのことを言います。腰痛の原因は多岐にわたり、腰椎の変性、椎間板ヘルニア、筋肉の不均衡、炎症性関節症、神経根の圧迫などです。

慢性腰痛の症状は、持続的な腰の痛みが主な特徴で、次の症状が現れることもあります。

  • 腰のこわばりや緊張感
  • 姿勢の悪化や運動時の不快感
  • 腰から臀部、下肢にかけての痛みやしびれ
  • 日常活動の制限や疲労感
  • 痛みの原因により腰回りや臀部に痛みが広がること

膜様腰痛

腰を曲げたり伸ばしたりするときに痛む腰痛で、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因であることが多いです。

神経根痛

腰椎の変性による骨の変化によって、神経の通り道が狭くなる神経の圧迫や、椎間板から飛び出した髄核による神経の圧迫で、腰の痛み、だるさ、足の痛みやしびれなどが引き起こされる症状です。(坐骨神経や腰神経の圧迫される事で起こります。)

症状は、背骨のどこで起こっているかによって異なりますが、病状が進むと、力が入らなくなったり、筋力が落ちてくることがあります。神経根症の多くは、体の左右どちらか一方にあらわれます。

反復性腰痛

定期的に繰り返し発生する腰痛で、痛みの原因は多岐にわたることがあります。

非特異的腰痛

明確な原因が特定できない腰痛で、筋肉や靭帯などの軽度の損傷が原因であることが多いです。

腰痛(痛む場所による分類)

腰椎そのものの傷や変形による腰痛

脊柱管狭窄症、腰椎分離症、すべり症などがあります。

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症は椎間孔と脊柱管の狭窄です。狭窄の要因として、椎間板膨隆・椎間関節肥大化・黄靭帯肥厚などがあり、脊柱の伸展で痛みは増強し、屈曲すると痛みは軽減する傾向があります。

腰椎分離症

腰椎分離症は、腰椎の後方部分の椎弓が分離した状態のことで、主に疲労骨折が原因と考えられています。特に成長期のスポーツ選手に多発します。

日本の一般成人では約6%(男性8%、女性4%)に認められていると言われています。

主な症状には、腰の痛み、坐骨神経痛、腰部のしびれなどです。

すべり症

腰椎の間にある椎間板の損傷による腰痛

椎間板症や椎間板ヘルニアなどがあります。

腰椎をつなぐ関節の損傷による腰痛

椎間関節性腰痛や棘突起インピンジメント障害などがあります。

腰椎周辺の筋肉や筋膜の損傷による腰痛

筋筋膜性腰痛などがあります。

筋筋膜性腰痛

筋筋膜性腰痛症は、筋肉や筋膜が原因である腰痛です。姿勢が悪いことで筋肉に慢性的に負担がある時や、スポーツなどでなど負荷がかかる時に、筋肉が緊張して動きが悪くなり痛みが現れる傾向があります。

痛みによる重症度

一般的に言われている痛みの程度による重症度を紹介します。

軽症

ランニングなどの運動は可能で、運動後に痛む。

中等症

ランニングなどの運動は可能で支障はないが、運動の途中や後に痛む。

重症

ランニングなどの運動の時、常に痛みがありパフォーマンスに支障が出る。腱や靱帯の断裂を起こし、日常生活にも支障が出る。

筋肉が原因による腰痛

筋筋膜性腰痛

腰痛の原因のなかで一番多く、筋肉のつっぱりや炎症によって起きる腰痛で筋筋膜性腰痛とよばれる腰痛があります。筋筋膜性腰痛は前屈をすると痛みがひどくなることが多いです。慢性的な動作や同じ姿勢を長時間していたりする事によっておこる腰痛です。また、痛みがひどい場合や、急性の腰痛はぎっくり腰とも呼ばれます。

ランニング中の腰痛〜筋・筋膜性腰痛〜

椎間板が原因による腰痛

腰椎椎間板ヘルニア

腰への負担が日々積み重なって起きる腰痛で、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎椎間板症などがあります。

椎間板とは骨と骨の間にある軟骨でクッションの役目をしています。椎間板が後方に飛び出した状態が椎間板ヘルニアで、飛び出した椎間板が神経を圧迫すると腰痛や坐骨神経痛、足先のしびれなどの症状があらわれることもあります。

(坐骨神経痛:臀部、大腿の裏に走るような痛み)

ランニング中の腰痛〜腰椎椎間板ヘルニア〜

椎間板ヘルニアによる腰痛

腰椎椎間板症

椎間板が加齢性変化により支持性やクッション性が低下し、安定性が悪くなった状態を腰椎椎間板症といい腰痛痛が発生します。体を動かしたとき、特に前に曲げたときに痛みが強くなることが多いです。また、下肢のシビレ、痛み、膀胱直腸の症状を伴うことは少ないです。

ランニング中の腰痛〜腰椎椎間板症〜

椎間板のイラスト

椎体、椎間板間(終板)が原因による腰痛

腰椎終板障害

終板は椎体と椎間板の境界部分で、厚さ1mm程度の軟骨です。この部分がが傷ついて障害が起こる事を終板障害といい腰痛の原因となります。骨橋輪障害ともいいます。

初期症状は限局性の腰痛で、腰を反らせると痛みが誘発される事が多いと言われています。障害が進行すると坐骨神経痛や脚のしびれや麻痺が起こる場合もあります。

ランニング中の腰痛〜腰椎終板障害〜

椎間関節が原因による腰痛

腰椎椎間関節症

腰椎椎間関節は腰椎後方の左右に位置しており、腰を曲げると椎間関節が拡大します。椎間板の動きを制御する働きもあります。

過度に腰をまげる力が加わると痛みの原因となります.

ランニング中の腰痛〜腰椎椎間関節症〜

椎体、骨が原因による腰痛

腰椎圧迫骨折、脊椎骨粗鬆症、腰椎疲労骨折、腰椎分離症などがあります。

腰椎圧迫骨折、脊椎骨粗鬆症

腰椎圧迫骨折は、椎体(腰椎)になんらかの負荷により潰れてしまうことで起こる椎体の骨折です。簡単には潰れてしまう事はないものですが、体の上下(縦)方向に強い負荷がかかった時に起こりやすいです。特に骨の密度が小さくなっている骨粗鬆症の方に起こりやすく、尻もちをついたり、高いところから落下した時などに起こります。

腰椎疲労骨折、腰椎分離症

腰椎疲労骨折は腰椎分離症とほぼ同じと考えて問題ありません。
腰椎分離症は腰椎の椎弓の一部が離れてしまっている状態です。一度離れてしますと偽関節となり再度癒合することは難しくなります。
すべり症を起こしたり、将来変形を起こす原因となります。

腰椎疲労骨折は、腰椎分離症の様に椎弓の一部が離れてしまう手前の段階のことをいい、初期のうちは微細なヒビが入るだけです。適切な治療により自然治癒も可能な場合もあります。
スポーツが原因される成長期の腰痛症のうち、25%以上が腰椎疲労骨と言われています。

ランニング中の腰痛〜椎体、骨が原因による腰痛〜

脊柱管の狭窄が原因による腰痛

腰部脊柱管狭窄症

背骨の神経(脊髄)が通る脊柱管が狭くなり長く立っていたり、歩くと腰や足が痛くなったりしびれたりする症状があらわれます。

”症状が出て休むとよくなる”を繰り返す間欠跛行という特徴的な症状を表すことが多いです。

脊柱管の狭窄部位により馬尾型、神経根型、混合型の3つに分けることができ、
馬尾型は、脊柱管が狭いことにより脊柱管を通る神経の束(馬尾)全体が圧迫されてしまう状態です。
神経根型は、脊柱管から神経が出る孔(椎間孔)が狭いことにより神経根が圧迫されてしまう状態です。
混合型は、馬尾型と神経根型が混在しているものです。

ランニング中の腰痛〜腰部脊柱管狭窄症が原因による腰痛〜

脊髄の狭窄

坐骨神経痛

坐骨神経痛は坐骨神経に沿ってお尻から脚にかけて起こる痛みの症状の総称を言います。

発症する時期や症状によって原因が異なります。

主に坐骨神経痛を引き起こす病気として、腰部脊柱管狭窄症や、腰部椎間板ヘルニア、腰椎すべり症などの脊椎脊髄の疾患があります。

その他に、血管性病変や腫瘍、内科、婦人科系の疾患、精神的要素などもあります。

その他の原因による腰痛

内臓の疾患による腰痛もあります。

  • 腎臓、すい臓の炎症
  • 尿管結石
  • 子宮、卵巣の疾患
  • 大動脈瘤
  • 腫瘍

などがあります。

じっとしていても痛い、痛みがだんだん強くなる場合には早めに医療機関を受診する事をお勧めします。

慢性的な腰痛の対策

腰痛は、腰背部の筋肉や腱、筋膜、関節が炎症などによる痛みです。炎症や痛みが続いている期間でにより、急性腰痛、亜急性腰痛、慢性腰痛に分けられます。

急性腰痛は6週間以内の炎症や痛み、亜急性腰痛は6~12週間の炎症や痛み、慢性腰痛は12週間以上続く炎症や痛みといわれています。

慢性的な腰痛は、長時間の同じ姿勢で筋肉が緊張し血行が悪くなったり、運動不足、筋肉の衰えなどのが原因となる事が多いです。

慢性的な腰痛に対する対策に姿勢の改善や、ハムストリングのストレッチ、腹筋を鍛えるドローイン、足腰やお腹周りの筋肉をきたえるスクワットなどがあります。

姿勢の改善

腰痛の予防には姿勢をよくすることが大切です。マッサージなどにより腰痛が改善しても姿勢が悪いとすぐに腰が痛くなってしまいます。そのため、正しい姿勢を知り意識して生活をすることが大切となります。

イスに座る場合や車の座席に座る時には、腰椎が軽く前に曲がった姿勢、重いものを持ち上げる時には、お尻とひざを落として持ち上げるように気を付けると腰痛の予防になります。

腰痛対策〜腰痛の予防のための姿勢〜

ハムストリングのストレッチ

ハムストリングは、太ももの後面にある筋肉で、大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋の3つの筋肉の総称です。

ハムストリングは疲労しやすく固まりやすい筋肉とも言われており、運動後に太もも裏(ハムストリング)が固まり痛くなりやすい部位です。ハムストリングが固くならないようにストレッチなどでほぐすことで、下半身の疲労回復や、ケガ(肉離れ)の防止、腰痛の予防にもなります。

ドローイン

スクワット

筋トレでスクワットはよく行われています。

スクワットの効果は、筋肉が鍛えられることにより、スポーツのパフォーマンスが上がる事、体を安定させる対幹部が鍛えられる事、全身の筋肉を使う事によりダイエット効果がある事などです。

スクワットを行うことで鍛えられる筋肉や、得られる効果の紹介と、スクワットを行う上で注意することを紹介します。

まとめ

2020-05-10マラソン 怪我トラブル,マラソン,腰痛

Posted by takacyan