ランニング中の腰痛〜筋・筋膜性腰痛〜

ランニングをしていて腰痛が発症したという人も多いと思います。
もともとの腰痛もちの悪化や、運動不足が原因と考える人も多いと思いますが、腰痛は様々な原因により発症します。

姿勢からくる腰痛や、トレーニングのし過ぎ、椎間板ヘルニアなどの腰部の疾患、身体の柔軟性が足りないことによる腰痛などがあります。

今回、腰痛の原因として比較的頻度の高い、筋筋膜性腰痛についてまとめました。

腰痛に悩む人は是非参考にしてください。

腰痛

腰痛は病気(疾患)の名前ではなく、主に腰、腰周囲の痛みやはりなどの不快感などの症状の総称のことを言います。座骨神経痛などの下肢(脚)の症状を伴う場合も含み、多くの人が腰痛を経験し、腰痛の症状を感じてています。

腰痛の定義

腰痛診療ガイドラインによる腰痛の定義は

  • 疼痛に部位による定義
  • 発症からの有症期間による定義
  • 腰痛を引き起こす原因別による定義

の3つから腰痛を定義されています。

腰痛の定義(要約)

疼痛に部位による定義
体幹後面に存在し、第12肋骨と殿溝下端の間にある、少なくとも1日以上継続する痛み、片側又は両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も伴わない場合もある。

発症からの有症期間による定義
急性腰痛(発症から期間が4週間未満)、亜急性腰痛(発症からの期間が4週間以上、3か月未満)、慢性腰痛(発症からの期間が3か月以上)の3つに大別される。

腰痛を引き起こす原因別による定義
脊椎由来、神経由来、内臓由来、血管由来、心因性、その他に定義される。具体的な原因は、以下の3つに大別される。
重篤な基礎疾患(悪性腫瘍、感染、骨折など)、下肢の神経症状を併発する疾患、各種脊柱構成体の退行性病変(椎間板・椎間関節編成など)

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf

発症からの有症期間による分類

腰痛診療ガイドラインによる腰痛の発症からの有症期間のよる分類は

  • 急性腰痛(発症から期間が4週間未満)
  • 亜急性腰痛(発症からの期間が4週間以上、3か月未満)
  • 慢性腰痛(発症からの期間が3か月以上)

急性腰痛

急性腰痛の一般的な症状は、急激に腰部に痛みが発生し、痛みが腰椎の周りや下部、お尻、または脚に広がる放射痛があることがあります。また、坐骨神経痛のように腰から足にかけての痛みやしびれを伴うこともあります。
一般的に、急激な動作や無理な姿勢が原因で発症が急速であることが特徴的です。特に、重い物の持ち上げや急激な姿勢の変化によって引き起こされることが多く、急性腰痛の発症時は、特定の動作や姿勢が難しくなり、立ち上がる、座る、歩くなどの動作制限を感じることがあります。

腰痛の原因別による分類

腰痛診療ガイドラインによる腰痛の原因別分類は

  • 脊椎とその周辺運動器由来
  • 神経由来
  • 内臓由来
  • 血管由来
  • 心因性
  • その他

の6種類に分けられています。

ランニングによる腰痛

ランニングなどのスポーツをしている人で腰の痛みをもつ人は多いのではないでしょうか?腰の痛みには腰椎椎間板ヘルニアや、腰椎分離症、圧迫骨折などが知られていますが、これらが原因ではない腰痛がほとんどです。原因が特定できない腰痛を腰痛症とも言われたりしますが、筋・筋膜性腰痛ともいいます。今回、腰痛の中の筋・筋膜性腰痛についてまとめてみました。

筋・筋膜性腰痛とは

筋・筋膜性腰痛とは腰痛症や筋性腰痛症とも言われるもので、腰まわりの筋肉の疲労や損傷などによる痛みをいいます。(通常は腰の痛みは、腰の骨や椎間板自体が痛むことはありません。)

腰痛の大半は、腰の筋肉や筋膜に負担のかかる姿勢などが原因となる筋・筋膜性腰痛と、骨や椎間板の変化により神経が圧迫されることによる坐骨神経痛であると言われています。

筋肉や筋膜による腰の痛みは、筋肉が硬くなり、筋肉の損傷や炎症、過度に緊張した状態になることで痛みを生じます。この筋肉や筋膜による腰痛を筋・筋膜性腰痛といいます。

炎症や損傷を起こした場合はズキンと痛い、ビリッっと痛いと感じます。過度に緊張を起こしている状態では、重い、だるい、や鈍い痛みを感じます。また、不用意に体をひねったり重いものを持ち上げようとした時にも起こる事があります。腰まわりの筋肉の疲労や損傷などによる痛みです。

筋肉と筋膜

筋肉

筋肉は骨と骨についており、収縮することでその間の関節を動かしたり、安定させています。
腰の周りの筋肉は、主に背骨を支えたり動かす事に関係しています。

腰まわりには多くの筋肉がついています。これらの筋肉は、体を前に倒したり、背中側に反ったり、右左の回転させるために働いています。腰椎が腰まわりにある筋肉には、腹直筋、腹斜筋、大殿筋、脊柱起立筋(腰肋筋、最長筋、棘筋)、多裂筋、腹横筋、腸腰筋などがあります。

  • 腹直筋:体を横に倒したり背中を丸めて前に倒すときに働く筋肉
  • 腹斜筋:体をひねる動作の時に働く筋肉
  • 大殿筋:股関節を動かす筋肉、脚を後ろにけりだす動きをする筋肉
  • 脊柱起立筋(腰肋筋、最長筋、棘筋):頭と背骨を支える筋肉で一般的には背筋ともいわれる筋肉で、背中を伸ばしたり、腰をそらしたりする筋肉です。
  • 多裂筋:体幹をねじる動きや背骨を安定させ身体のバランス支える筋肉
  • 腹横筋:腰の動きを支える筋肉でおなかを引き締める働きもしている筋肉
  • 腸腰筋:脚、膝を持ち上げる働きと腰の動きを支える筋肉

腰回りの筋肉はそれぞれ姿勢の制御に大事な役割をもっています。

筋膜

筋膜は筋肉の周りに筋肉を包んでいる膜のことで、体全体に張り巡らされています。筋膜は、様々な方向に伸びる性質をもっており、体を支える第二の骨格の役割をしています。
筋膜は筋外膜、筋周膜、筋内膜に分けられます。筋外膜は筋を覆っている最外層、筋周膜は筋線維を束ねて覆う層、筋内膜は筋線維1本1本を包んでいます。

腰や背中の筋膜は胸腰筋膜といい大臀筋や広背筋、内腹斜筋、腹横筋などの筋肉と繋がり、背中が丸くならないように支える役割や体全体を支える役割をしています。

筋・筋膜性腰痛になる原因

何らかの原因で、腰周りの筋肉への過度な負担により、筋肉が硬くなる事が原因といえます。

筋肉が硬くなると、筋肉の中の血管が圧迫され血流が滞り老廃物が溜まってします。この老廃物の中には発痛物質が含まれるため、痛みとともに炎症も起こしてしまい痛みを発症します。炎症はさらに筋肉を固くしてしまい痛みの悪循環となってしまいます。

このように、筋筋膜性腰痛は筋肉が硬くなり血液の循環が原因となる場合が多いです。

また筋肉が硬くなった場所が動作をすることで伸び、痛みが発症する場合もあります。この場合は、運動前のストレッチ(ウォーミングアップ)不足、運動簿のストレッチ(クールダウン)不足により、疲労の蓄積、老廃物の蓄積し筋肉が硬くなってしまいます。

その他に長時間の腰に負担のかかる姿勢や動作が原因となる場合もあります。

腰に負担のかかる動きには、重いものを持ったり、急激に腰を曲げたり捻ったり反らせたりすることです。

腰に負担のかかる姿勢は、中腰姿勢や前傾姿勢を長時間維持する姿勢などです。

姿勢の悪い人と姿勢のいい人の姿勢をイラストで比較しています。姿勢の悪い人に腰痛を生じる可能性が高いです。
悪い姿勢といい姿勢

筋・筋膜性腰痛の可能性のある痛み

筋・筋膜性腰痛は、体を前に倒したとき(前屈)に腰が痛むことが多く、体を後ろにそらしたとき(後屈)にはあまり痛みを生じないことが多いです。また、体をひねった時、ひねった方向と反対の方向が痛みます。(例えば、左に体をひねった場合には右側が痛む)つまり、体が伸ばされたところに痛みが生じる腰痛です。

筋・筋膜性腰痛では足にしびれを生じない、痛みが腰周りを中心に限局した痛みの場合が多いです。

筋・筋膜性腰痛の痛みの対策

腰痛の原因となることが多い筋・筋膜性腰痛はMRIやレントゲンなどの検査で発見できないため、原因のはっきりしない腰痛として扱われ、湿布の処方だけで終わってしまうことも多くあります。腰椎椎間板ヘルニアや骨折などの腰の疾患を否定した上で、腰、背中、殿部周囲にある筋肉の緊張の緩和を行なったり、筋力強化を行う事で痛みを和らげることが期待出来ます。

腰痛に人のイラストです。まっすぐ立てずに腰を抑えている様子です。
腰の痛い人

筋・筋膜性腰痛の痛みの対策は、痛みの場所に対して、揉む、押す、温める、冷やす、湿布や医療機関にて針や電気、痛み止めの注射、針を打つ、筋膜リリースなどの方法で痛みの対策を行います。これは、痛みを出している腰の部分の炎症を抑えたり、腰の筋肉を緩めて痛みを抑える対処方法です。痛み自体は和らぐと思いますが、痛みの根本の解決とは言えません。

痛みの根本の対策には、腰回りや太ももの筋肉を柔らかくして、腰回りの血流をよくしたり、自分自身では気付く事は出来ませんが、腰に悪影響を及ぼしている姿勢などの生活習慣の見直す事が必要です。

バンテリンコーワ加圧サポーター 腰用固定タイプ

筋・筋膜性腰痛の予防

筋・筋膜性腰痛を予防するためには、腰回りや太ももの筋肉を柔らかくしておくことが大切です。

ふとももの筋肉は柔らかくしておく事で骨盤の歪みが起こりにくく正しい姿勢の維持が出来ます。そのため、腰に疲労が溜まりにくくなります。

腰が痛くなる姿勢

筋筋膜性腰痛は、腰に負担のかかる姿勢が原因の一因になります。特に負担となる姿勢を紹介します。

  • デスクワークなどで長時間同じ姿勢でいる場合や、車の長時間運転などにより同じ姿勢でいる時
  • 体を反った状態で歩いたり、重たい物を持ち上げたりする時
  • 前かがみで作業をする事を続けた時
  • 腰に交通事故などで衝撃を受けた時
  • スポーツを急にはじめた時や、スポーツを激しく行いすぎた時
  • 普段運動をしない人が急にはじめた時

などがあります。同じ姿勢でいる事、急に体を激しく動かした時、前かがみで作業を行う時、激しく体を動かした時に注意が必要となります。

腰回りや太ももの筋肉を柔らかくする方法

〜腰回りの筋肉〜

仰向けになって両膝を抱える姿勢をとる事で、腰の筋肉が伸びます。この時、膝をしっかり抱える事と、背中が伸びていることを意識して下さい。

〜太もも(ハムストリング)の筋肉〜

立った状態で前屈、足を伸ばして座った状態で前屈する事で、ふとももからふくらはぎの裏側の筋肉を伸びます。この時、膝を曲げないようにする事と、太ももやふくらはぎの裏側が伸びている事を意識しで下さい

〜お腹、腰回りの筋肉〜

腹式呼吸を意識的にする事でお腹、腰回りの筋肉を鍛える事ができます。腹式呼吸は、お腹を膨らませるようにして大きく息を吸い腹を凹ませるように息を吐くをゆっくり(10秒程度)行う事です。

腰の痛みをやわらげるには〜一般的な方法〜

安静

痛みが現れたらまずは安静です。背中を丸めて横向きで寝ると楽になる事が多いです。横向きではなく仰向けの場合で安静にするときは、膝の下にクッションや座布団などを置き膝を曲げた状態にするすると楽になることが多いです。

冷やす(急な痛みの時)

腰が伸ばせるのであればうつ伏せになり、氷のうやアイスバックなどを痛みのあるところを中心に置き痛みを和らげます。氷のうやアイスバックと体の間にはタオルなどを置き冷やしすぎないように気をつけてください。冷やしすぎにより皮膚がヒリヒリしたり、痛みが増してきた場合は、冷やすことはやめて下さい。

温める(慢性的な痛み、痛みが治まった時)

慢性的な痛みがある場合や、痛みが治まった時には、ホットパックや、蒸しタオルで痛みのある場所、痛みがあった場所中心に温めてください。

マッサージ

慢性的な痛みがある場合や、痛みが治まってからは、筋肉をほぐし、血行を良くし、再発防止のためにマッサージを行なってください。マッサージは、急性の腰痛の場合には逆効果になってしまいます。

痛みをしる

今の腰の痛みを冷静に知る事も大切です。

痛みの状態を知る事で、痛みに対する対策や、医療機関に受診した時に適切な対応、処置、検査が効率良く行われることになります。

いつから痛むのか?どこが痛むのか?どんな風に痛むのか?どんな時に痛むのか?その他の症状はないか?

を自分自身で理解しておくといいのではないでしょうか。

いつから痛むのか?

いつから痛むのか、痛みは強くなっているのか、痛みの場所は変わるのかなど痛みの時系列を把握しておきます。必要であればカレンダーや手帳などに痛みの場所、痛みの強さなどを記録しておくのもおすすめです。

どこが痛むのか?

腰のどの部分が痛むのか、腰以外にどの場所まで痛むのかを記録しておき痛みが広がるか狭まるかなどを把握しておくのも必要です。また、背中、足まで痛みが広がる様であれば早めに医療機関に受診する事も考えなくてはなりません。

どんな風に痛むのか?

痛みの強さや、痛みの症状を把握します。

(痛い、痺れ、鈍痛、激しい痛み、針の刺さった様な痛みなど)

また、痛みなどの症状がすぐ治るのか、続くのかなども把握しておきます。

どんな時に痛むのか?

腰を曲げると痛い、伸ばすと痛い、歩くと痛い、走ると痛い、動かなくても痛いなどを把握し、痛みが起きる時の動き、動作を知ることも必要です。

その他の痛みはあるか?

足、大腿、お尻、背中の痛みやしびれ、まひなどの症状や、発熱、尿や便がでにくい、血尿などの他の症状があるかも把握し、必要に応じて医療機関に受診して下さい。それも必ず伝えてください。

筋・筋膜性腰痛に対する一般的な治療

痛みの軽減には一般的に、筋肉に大きな負担をかけない事、筋肉を疲労させない事を日常生活で気を付けることです。痛みがおさまらない場合には、運動療法や温熱療法・薬物療法・装具療法などの療法があります。

痛みの発症直後の急性期の場合では、安静とアイシングを行い、痛みが落ち着いてきたらストレッチを徐々に始めていきます。また、痛みの部位を温め血行が改善する事で筋肉の修復が早くなります。

運動療法

痛みは筋肉が伸びたり委縮した状態になった為に起こる痛みですので、 ゆっくりとストレッチなどの運動をすることで腰の筋肉の緊張がほぐれ痛みが軽減します。

また徐々に筋力を増強することも治療となります。

まとめ

筋・筋膜性腰痛について私の考える対処方法を記載しました。痛みは人によって症状も原因も異なります。痛みがある場合や痛みが続く場合は、医療機関へ受診や、専門家へ相談してください。

その他に腰の痛みには、腰椎椎間板ヘルニアや、腰椎分離症などもあります。

ランニング中のトラブル

2019-06-06マラソンマラソン,筋肉,腰痛

Posted by takacyan