ランニングと食物依存性運動誘発アナフィラキシー
食物依存性運動誘発アナフィラキシーを聞いたことはありますか?
ランニングやマラソン をする人に限らず、運動をする人は知っていて欲しいアレルギー反応ですのでぜひ参照してください。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphyraxis: FDEIA)とはある特定の食品を食べた後、数時間後に運動すると急激にアレルギー反応が起こり、アナフィラキシー・ショックを起こす事をいいます。運動の強さは、ランニング、バスケ、サッカーなどの激しい運動により引き起こされることが多いと言われていますが、激しいものだけとはかぎらず、散歩や入浴などの軽い運動や動作でも起きることがあります。
この食物依存性運動誘発 アナフィラキシーは、アレルギー発生の原因となる食物を食べただけでは症状が現れず、原因となる食物を食べてから2~4時間以内に、一定以上の運動を行うことで症状が引き起こされることが特徴です。食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、進行が非常に早く重症化する傾向があり、比較的重症度が高く全身のじんま疹や呼吸困難、血圧低下、意識障害などの重篤な症状が高頻度に生じます。
初期症状(じんましんやかゆみ)が現れているのにそのまま運動を続けていると、あっという間に呼吸困難からショック状態となる可能性がありますので、症状が現れたらすぐ運動を中止し必要に応じて、迷わず救急車を呼ぶことが大切です。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因
食物依存性運動誘発アナフィラキシー誘因となる食べものだけではアナフィラキシーの症状は起きず、食べた後にランニングなどの運動を行うことで出現するアレルギー反応です。食品と運動の2つの要素が重なる事で起こります。運動をきっかけに細胞からヒスタミンが放出されることで起きると考えられています。
誘因となる食物は小麦関連製品や甲殻類(えび、かに)が多いといわれています。
男性に比較的多く、男性は女性に比べ1.5倍に起こりやすいと言われています。特に10歳代の男性に好発すると言われています。
原因食物
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因(誘発)となる食物は、小麦(60%)、エビ、イカ、カニなどの甲殻類(30%)で、その他には、果物やナッツ類が原因になることもあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの発症時の運動
食物アレルギー診療ガイドライン2016によると、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症した時に行っていた運動は、球技(38%)やランニング(28%)が多く、次いで歩行、自転車、水泳、ゴルフとなっています。
特に10歳代の男性に好発するとあるため、学生の部活時に発症が多いのではないかと推測できます。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーを悪化させる状態
食物依存性運動誘発アナフィラキシーを悪化させる可能性は、体調、気象条件、自律神経、花粉症、薬物などがあるといわれています。
- 体調は、疲れや睡眠不足、風邪、生理などが関係します。
- 気象条件は、温度や湿度の変化が関係します。
- 自律神経はストレスが関係します。
- 花粉症は、摂取した野菜や果物に花粉に対する抗体が反応することに関係します。
- 薬物などは、解熱鎮痛薬の成分、アルコールが関係します。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの症状
非常に強いアレルギー症状が短時間に引き起こさされて、全身のじんましんなどの皮膚症状やむくみ、せき込み、気道の狭窄による呼吸困難などが出現します。
主な症状には、じんましん、蕁麻疹、呼吸困難、喉の腫れ、低血圧、意識障害などがあり、症状が重篤な場合には、死亡する可能性もあります。
症状が現れた人の約半数は血圧が低下や意識障害などの症状を起こすと言われています。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの対策
運動前にはアレルギー反応の原因となる食物を摂取しない事と、アレルギー反応の原因となる食物を食べてから2時間は運動を避けることである程度の予防は可能となります。
もし、皮膚の違和感や蕁麻疹などの症状が出現した場合は、運動を中止し休憩する事と、症状が悪化した時のために他の人を近くに呼び何かあった時のために備えることも大切となります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーが起こったら
運動時に蕁麻疹、皮膚の違和感などや、いつもと違う息苦しさを感じたら運動を中止して様子を見たり、必要に応じて医療機関へ受診する事が大切となります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの治療には、早期の対応が必要です。まず、症状の進行を止めるために、エピネフリン注射が必要です。その後、抗ヒスタミン剤やステロイド剤などの薬物治療が必要になる場合があります。
食物アレルギーの主な症状
食物アレルギーの症状は特定の食物を食べた後に、皮膚症状、粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状、消化器症状、神経症状、全身症状などの症状があり同時に出現したり別々に出現したりします。このなかで、皮膚症状はいちばん出現頻度が高いと言われています。食物アレルギーの種類や程度によって異なります。症状が出た場合には、速やかに医師の診断を受けることが重要です。
主な皮膚症状、粘膜症状
皮膚症状
- じんま疹(じんましん):皮膚に赤い発疹が現れ、かゆみを伴います。
- 蕁麻疹(じんましん):発疹が広がり、触ると膨らんでいるような感触があります。
- アトピー性皮膚炎:皮膚が乾燥して痒く、かきむしったりすると炎症が起こってしまいます。
- 赤み、かゆみ、水疱(みずぶくれ):食物アレルギーによって発生する蕁麻疹が酷い場合、皮膚が痛んで赤くなることがあります。
粘膜症状
- アレルギー性鼻炎:鼻水や鼻づまり、くしゃみが出ます。
- アレルギー性結膜炎:目のかゆみ、充血、涙目が出ます。
- 口内炎:口の中にできる痛みを伴う赤い斑点です。
- 喉の腫れや痛み:食道や喉に違和感を感じ、喉の痛みや腫れが出ることがあります。
呼吸器症状
- 喘息:気管支が狭くなり、息苦しさや呼吸困難を引き起こします。
- 喉頭浮腫(こうとうふしゅ):喉の部分が腫れ、呼吸器症状が出ます。重症化すると窒息することがあります。
- 鼻炎:鼻の粘膜が腫れ、鼻水や鼻づまり、くしゃみが出ます。
- 咳や呼吸困難:食物が気管に詰まって喉が詰まる場合、咳や呼吸困難を引き起こします。
循環器症状
- 血圧の低下:血圧が急激に低下することで、めまいや失神などが起こる場合があります。
- 脈拍の変化:脈拍が不規則になることがあります。
- 心臓の動悸:心臓の鼓動が速くなり、強く感じられます。
- 血管の拡張:血管が拡張し、顔面や口唇が赤くなることがあります。
消化器症状
- 腹痛:腹部に痛みや不快感を感じることがあります。
- 下痢:水様性の便が出たり、排便回数が増えたりすることがあります。
- 吐き気・嘔吐:食物を食べた後、吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
- 腹部膨満感:腹部が張ったような膨満感を感じることがあります。
- 下痢と便秘の症状が交互に起こる場合がある。
神経症状
- 頭痛:頭痛を感じることがあります。
- めまい:立ちくらみやめまいを感じることがあります。
- 不安感:不安感や緊張感を感じることがあります。
- 意識障害:意識が混濁したり、昏睡したりすることがあります。
全身症状
- アナフィラキシーショック:呼吸困難、喉の腫れ、蕁麻疹、低血圧などを引き起こし、急激に生命に関わる状態になることがあります。
- 蕁麻疹:発疹が皮膚に現れ、強いかゆみを伴うことがあります。
- 食欲不振:食欲が低下し、食事が嫌悪感を引き起こすことがあります。
- 発熱:熱が出ることがあります。
特にアナフィラキシーショックは、食物アレルギーによって引き起こされる最も重篤な症状の一つです。症状が出た場合には、速やかに医師の診断を受けることが重要です。また、症状が重度の場合には、救急車を呼ぶことが必要です。
まとめ
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの存在を知っておくことで、運動時のアレルギー反応様症状に対し早期に対処できます。アレルギー体質の人は特に知っておくといいと思います。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーはある特定の食品を食べた後、数時間後に運動すると急激にアレルギー反応を起こしたり、アナフィラキシー・ショックを起こす事をいいます、ランニングなどの運動時に、蕁麻疹、皮膚の違和感などや、いつもと違う息苦しさを感じたら運動を中止して様子を見たり、必要に応じて医療機関へ受診する事が大切となります。