マラソン・ランニングと滑車神経麻痺について~ランナーが知っておきたい目の健康と安全〜

マラソンやランニングは心身の健康を維持し、ストレス解消や体力向上に役立つ素晴らしいスポーツです。しかし、ランナーの中には「滑車神経麻痺(かっしゃしんけいまひ)」という目の病気に悩んでいる方や、その可能性に気づかず症状を抱えている方もいらっしゃいます。この記事では、滑車神経麻痺の症状や原因、治療法、そしてマラソンやランニングを行う際の注意点について詳しく解説します。安全で快適なランニングライフを送るためのヒントをご紹介します。

滑車神経麻痺とは

滑車神経(第4脳神経)は、眼球を動かす筋肉のうち「上斜筋(じょうしゃきん)」という筋肉を支配しています。この神経が何らかの理由で障害されると、滑車神経麻痺が起こります。

主な症状

• 複視(ふくし):ものが二重に見える現象。特に上下方向の複視が特徴です。
• 眼球運動障害:眼球を内側の下方に動かすことが難しくなります。
• 階段を下りる時や本を読む時に症状が悪化:下を向く動作で複視が強くなります。
• 頭位異常:症状を軽減するために、頭を傾けて生活する人が多いです。
• 視野の障害:正面の下方向の視野がさえぎられる場合もあります。

滑車神経麻痺の原因

• 頭部外傷:交通事故やスポーツ中のケガなど、頭部への衝撃が原因となることが多いです。
• 循環障害・血管障害:糖尿病などの基礎疾患がある場合、神経への血流が悪くなり発症することがあります。
• 先天性:生まれつきの場合もあります。
• その他:腫瘍や炎症、感染症なども原因となります。

滑車神経麻痺の診断と検査

滑車神経麻痺の診断には、CTやMRIなどの画像検査が用いられます。また、眼科医による詳細な視機能検査や眼球運動の評価も重要です。
滑車神経麻痺の治療法
滑車神経麻痺の治療は、原因や症状の程度によって異なります。
• 原因疾患の治療:外傷や循環障害など原因が特定できる場合は、その治療を行います。
• 対症療法:プリズム眼鏡や視能訓練によって複視を軽減します。
• 手術療法:症状が長引く場合や生活に支障がある場合は、手術が検討されます。
• 眼球の体操:一部の症例では眼球運動の訓練が有効な場合もあります。
滑車神経麻痺は、原因によりますが多くの場合、数ヶ月で自然に軽快することも多いです。

マラソン・ランニングと滑車神経麻痺の関係

マラソンやランニングは、全身の健康維持やストレス解消に非常に有効です。しかし、滑車神経麻痺を抱えるランナーは、いくつかの注意点があります。

ランニング・マラソン時の注意点

  1. 視覚障害によるリスク
    滑車神経麻痺では、複視や眼球運動障害によって周囲の状況把握が難しくなります。特にマラソン大会や公道でのランニングでは、他のランナーや歩行者、車両、障害物などへの注意が必要です。複視があると、距離感や位置関係が把握しにくくなるため、転倒や衝突のリスクが高まります。
  2. 頭位の変化
    滑車神経麻痺では、頭を傾けることで複視が軽減されることがあります。しかし、マラソンやランニング中は、頭を傾けて走る姿勢を長時間維持することは困難です。そのため、複視による不快感や危険が増す場合があります。
  3. 疲労や体調変化
    長時間の運動による疲労は、症状を悪化させる可能性があります。特に暑い日や体調が優れない日は、症状が強く出ることがあるため、無理をしないことが大切です。

安全対策

  • ランニングコースの選択:交通量の少ない安全なコースを選びましょう。
  • •ランニング仲間との同行:一人で走るよりも、仲間と一緒に走ることで安全を確保できます。
  • •症状の悪化時は無理をしない:複視や視覚障害が強くなった場合は、すぐに休息を取り、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

ランナーへのアドバイス

滑車神経麻痺を抱えるランナーは、主治医と相談しながら運動の可否や強度を決めることが重要です。症状が軽度で日常生活に支障がない場合は、無理のない範囲でランニングを続けることができます。しかし、症状が強い場合や悪化する場合は、運動を控え、適切な治療を受けることが推奨されます。また、ランニング中に複視や視覚障害が発生した場合は、すぐに立ち止まり、安全な場所で休憩を取りましょう。必要に応じて、プリズム眼鏡などの補助具を活用することも検討してください。

滑車神経麻痺の予防と早期発見

滑車神経麻痺は、頭部外傷や循環障害などが主な原因です。ランナーは、転倒や衝突などのリスクを減らすために、以下の点に注意しましょう。

  • ヘッドギアの着用:自転車やバイクに乗る際は、必ずヘルメットを着用しましょう。
  • 体調管理:糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある場合は、適切な治療と管理を心がけましょう。
  • 定期的な健康診断:目の異常や視力の変化に気づいたら、早めに眼科を受診しましょう。

滑車神経麻痺と動眼神経麻痺の違い・ランニングへの影響

滑車神経麻痺と動眼神経麻痺の違い

種類支配する筋肉主な症状
滑車神経麻痺上斜筋上下・回旋(特に下方への動き)障害
上下方向や回転の複視
動眼神経麻痺内直筋・上下直筋・下斜筋など眼の運動全般の障害
まぶたが下がる(眼瞼下垂)
眼が外側・下側に向く
瞳孔が開く
複視
  • 滑車神経麻痺
     上斜筋のみが麻痺し、特に目を内側・下方に向ける動きや回転(内方回旋)が障害されます。 主症状は上下・回旋の複視(特に下方向)、頭を傾けて視界を調整する「頭位異常」などです。
  • 動眼神経麻痺
     複数の筋肉が一度に障害され、まぶたを上げる筋肉や瞳孔を調節する筋肉も含まれるため、眼瞼下垂(まぶたが下がる)、眼の運動障害による顕著な眼の位置異常(外下方にずれる)、複視、まぶしさ(瞳孔散大)など多彩な症状を生じます。

ランニングへの影響

滑車神経麻痺

  • 上下・回転方向の複視により、特に下方向を見るときに物が二重に見えやすくなります(階段の上り下りや路面確認が困難)。ランニング中は足元の障害物や段差を正確に把握しにくく、転倒・衝突などの事故リスクが高まります。
  • 複視を避けるため頭を傾けがちですが、長時間その姿勢を維持しながら走るのは困難で、視野・距離感の異常も残りやすいです。

動眼神経麻痺

  • 眼球運動全体が障害されるため、障害物の認識・距離感がつかみにくくなり、ランニング時の安全性が著しく低下します。
  • まぶたが下がることで視界自体が狭くなり、周囲の状況把握に支障が出るほか、まぶしさによる集中力低下、場合によっては眼痛・頭痛などもあり、パフォーマンスや安全性には特に注意が必要です。

滑車神経麻痺とランナーへの影響のまとめ

滑車神経麻痺は、眼球運動障害や複視によって日常生活やスポーツに影響を及ぼすことがあります。マラソンやランニングを楽しむランナーは、症状の程度や治療経過を主治医と相談しながら、安全なランニングライフを送ることが大切です。症状が強い場合は無理をせず、適切な治療と休息を優先しましょう。
滑車神経麻痺を正しく理解し、安全に配慮することで、マラソンやランニングをより楽しむことができます。目の健康にも気を配り、快適なランニングライフを送りましょう。

2025-05-21体を知るマラソン,マラソン大会,攻略

Posted by takacyan