ランニング中の足首の捻挫〜内反捻挫と外反捻挫〜
ランニング中に限らず、歩いているときにつまづき転んだ時、階段を踏み外した時などに足をくじくなど、日常生活の中でも起こるケガの一つに捻挫があります。
特にランニング中の足首のケガでは、捻挫が多く多くのランナーが一度は経験した事があるのではないでしょうか?
捻挫とはどのようなケガで、捻挫した時はどのように対処したらいいのか、捻挫を予防するためにはどうしたらいいのかを紹介します。
足首(足関節) と骨
足関節は、地面に接地する足と体重を支える脚のつなぎ目の関節の総称で、遠位脛腓関節、距腿関節、距骨下関節の3つの関節からなる複合関節です。
この3つの関節が正常に機能することで、歩く、ジャンプする、立つなどの動きがスムーズに行えます。
足関節を構成する骨は、脛骨、腓骨、踵骨、距骨などで、足関節の主な働きは、つま先を上下に動かすことです。
関節の表面は弾力のある軟骨で覆われており、この軟骨は、衝撃を吸収したり関節の摩擦を減らし滑らかに関節を動かす働きを行っています。
遠位脛腓関節
遠位脛腓関節は、下腿部の骨である脛骨と腓骨が形成する関節で、足首の部分に位置します。この関節は、足の内側および外側のくるぶし部分にあり、足の動きを調整するために重要な役割を果たします。遠位脛腓関節は、足首の内反や外反、足首の伸展や屈曲などの動きを制御するために、多くの筋肉や靭帯によって支えられています。
距腿関節
距腿関節は、足首の部位のひとつで、距骨(脛骨の外側にある長い骨)と腓骨(脛骨の内側にある細長い骨)が接する部分です。距骨と腓骨は、脛骨とともに下肢の骨格を形成しています。
距腿関節は、足首の外側にあるため、足首を内側にひねる動きに対して強い負荷を受けます。このため、スポーツなどで足首を捻挫すると、距腿関節の靭帯や筋肉に損傷を受けることがあります。また、長時間の歩行やランニングなどで、距腿関節周辺の筋肉が疲労し、足首の安定性が低下することもあります。
距腿関節を強化するためには、足首の内側の筋肉を鍛えるトレーニングが有効です。具体的には、足首を内側に捻る運動や、体重を乗せた状態でつま先立ちになる運動などがあります。また、適切なシューズの選択や、ストレッチなども、距腿関節周辺の筋肉や靭帯を強化するために役立ちます。
脛骨
下腿ある2本の骨のうち、内側にある骨で、体重を支える骨です。この骨を負傷すると歩行などが困難になります。足首付近の内側面は内果といいます。
腓骨
下腿ある2本の骨のうち、外側にある骨で、体重負荷には関与しない骨で、筋肉の付着部としての役割をしています。足首部分は外果といいます。
踵骨
かかとの骨です。
アキレス腱の付着部
距骨
脛骨、腓骨、踵骨の間にある骨で、足首から下腿に体重がしっかりと伝えることで、バランスを取り、歩行を可能にしています。
足首(足関節) の靭帯
足首には骨の数が多く、骨と骨とつなぐ靭帯がたくさんあります。足首(足関節)を支持している靭帯には大きく内側靭帯と外側靭帯があります。
足首の捻挫は、足首をねじったり、強くひねったりして、靭帯が伸びたり、破れたりすることによって引き起こされる怪我です。足首の捻挫は、スポーツや日常生活でよく起こります。
内側靭帯は足首の内側にある靭帯、外側靭帯は足首の外側にある靭帯です。
内側靭帯
足首の内側を支える靭帯で三角靭帯があります。三角靭帯(内側靱帯の総称で前脛距靭帯、脛舟靭帯、脛踵靭帯、後脛距靭帯の靭帯で構成)は脛骨内果と距骨・舟状骨・踵骨をつなぐ役割と外反を制限する役割があります。
外側靭帯
足首の外側を支える靭帯で、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯の3つの靭帯で構成されています。捻挫の場合前距腓靭帯、踵腓靭帯の損傷が多く、後距腓靭帯の損傷が起こることは稀です。
前距腓靭帯(ATFL:Anterior Talofibular Ligament)
前距腓靭帯は、平らな帯のような靭帯で、腓骨外前方から距骨の前面に付着しており、脛骨に対して距骨が前方にズレることを抑制する働きをしています。
外側靭帯の中で最も薄くて弱く、受傷する頻度が多い靭帯の一つです。
特に、転倒やスポーツなどで受傷しやすい靭帯で、過度に足関節を底屈・内反を強いられることで損傷します。
ジャンプして着地した時に受傷したり、階段を踏み外したときに足首の内返しにより受傷する事が多いです。
踵腓靭帯(CFL: Calaneofibular Ligament)
踵腓靭帯は、腓骨外果の下部から踵骨外側に付着する靭帯で、足関節の安定性を保つ働きをしています。
過度に足関節を底屈・内反を強いられることで損傷します。踵腓靭帯単独では損傷が起こることは少なく、前距腓靭帯と一緒に損傷することが多いです。
後距腓靭帯(PTFL:Posterior talofibular Ligament)
後距腓靭帯は腓骨外果の後方から距骨の後面に付着する靭帯で、外側靭帯の中で最も分厚く強い靭帯です。脛骨に対して距骨が後方にズレることを抑制する働きをしています。
足首の捻挫
足首の捻挫は、足首を捻ることが原因で、靭帯・関節包などの損傷です。
スポーツ中の怪我だけでなく、日常生活でも転倒や段差の踏み外しなどによって受傷しやすい怪我です。
多くの場合、足首を内側に捻る事による捻挫で、前距腓靱帯の損傷を伴うこともあります。足関節外側靭帯損傷ともいわれます。
足首の捻挫は、大きく分けると内反捻挫と外反捻挫に分けられます。
内反捻挫
足首の捻挫は大きく分けると内反捻挫、外反捻挫に分けれますが、内反捻挫が外反捻挫よりも多いと言われています。
内反捻挫は、足関節が内がえし(足裏が内側を向く動き)することによって起こり、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靱帯などの足首の外側にある靭帯や、二分靱帯などの損傷です。
外反捻挫
外反捻挫は、足関節が外がえし(足裏が外側を向く動き)することによって起こり、三角靭帯(内側靱帯の総称で前脛距靭帯、脛舟靭帯、脛踵靭帯、後脛距靭帯の靭帯で構成)などの足首の内側にある靭帯の損傷です。
内側の三角靭帯は、外側の靭帯にくらべ強固な靭帯の為、内反捻挫より少ないと言われています。
捻挫の重症度
捻挫の重症度には分類があり、Ⅰ度〜Ⅲ度に分類さています。
Ⅰ度(軽度)
靱帯にちいさな損傷があり、軽度な痛みがあるか、腫れが少しまたはほとんど見えない状態です。皮膚の変色、関節の緩みもなく、数⽇でスポーツへの復帰が可能です。
Ⅱ度(中等度)
靱帯に部分断裂が起き、腫れや圧痛がある状態で、皮膚の変色、軽度の関節の緩みもあり、スポーツの復帰には2週間以上必要となります。基本的には、テーピングや装具による固定が必要となります。
Ⅲ度(重度)
靱帯が完全に断裂しており、腫れや圧痛、⽪下出⾎が強く、関節は不安定で可動域も低下した状態です。
断裂した靱帯の縫合⼿術、リハビリが必要でスポーツへの復帰にも数か⽉かかります。
一般的な症状
捻挫を起こした時の症状は、痛み、腫れ、変色、可動域の低下、歩行困難などがあります。
- 痛み:負傷直後から足首の内側又は外側に痛みを感じます。
- 腫れ:負傷後すぐに腫れ始めます。
- 変色:皮下に内出血がおこることで、変色(青あざ)がみられます。
- 可動域の低下:足首を動かすと痛みを感じるため、可動域が低下します。
- 歩行困難:内側の靭帯は体重を支える脛骨に付着していることから、荷重すると痛みが増し歩行困難がみられます。
捻挫で腫れる理由
捻挫は関節が可動域をこえて伸ばされたり、捩じられた時に、関節を構成する靭帯や筋肉の損傷、骨折などがおこった状態です。
捻挫を起こした直後の急性期では、腫れる理由は、関節包の滑膜や軟骨に亀裂が生じ、液状の物質が関節包の中に分泌され腫脹がおこります。この時、関節内の圧力も高まるため痛みが生じます。靱帯が断裂、部分断裂を起こすと、靭帯にある血管が切れ、関節内に出血し腫れます。この状態では、皮下に青黒く出血斑が見えることもあります。
また、炎症がおきると炎症細胞の出す炎症物質が血管の透過性を亢進させて、組織内に水分が出て腫脹が強くなります。
捻挫した時の対処
テーピングなどで足首を固定などを行い、急性炎症を軽減させるRICES処置を行います。
RICES処置は、
- R(安静:Rest)
- I(冷却:Icing)
- C(圧迫:Compression)
- E(挙上:Elevation)
- S(固定:Stabilization/Support)
です。
保冷
怪我直後は、氷を足首に当てることで痛みや腫れを軽減することができます。保冷は、15〜20分ごとに数回繰り返し行うことが効果的です。
圧迫
足首を包帯やサポーターで固定することで、腫れを軽減し、痛みを和らげることができます。
休養
怪我をした足首を休めることが大切です。少なくとも数日間は、足首を負荷をかけないようにしましょう。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用
痛みや腫れを軽減するために、医師が処方する場合があります。
理学療法
足首の捻挫の回復を促すために、理学療法が必要な場合があります。理学療法は、筋力を回復させ、足首の可動域を改善することができます。