ランニング中のケガ〜膝〜
ランニングなどのスポーツの怪我には、大きく分けてスポーツ外傷とスポーツ障害の2種類あります。スポーツ外傷は、物や人にぶつかったり、外部から瞬間的に強い力が加わることによる怪我で、スポーツ障害は、走ったり跳んだり投げたりと同じ動作の繰り返しにより、骨や筋肉、腱などが疲労して起こる怪我です。
特に、過度のランニングによる障害をランニング障害ともいい、疲労、過労、病的疲労が原因となります。障害が起きやすい部位は腰、股関節、膝関節、足などで、ランニング障害の多くを占めているといわれています。
スポーツ障害とスポーツ外傷
膝に限らず、スポーツによって発生する怪我は、発生状況によってスポーツ障害とスポーツ外傷に大別されます。
スポーツ障害
一般的にスポーツ障害は使いすぎ(オーバーユース)や持続的、慢性的な負荷によって発症する障害で、疲労骨折、ジャンパー膝、アキレス腱炎、オスグッド病、テニス肘、野球肘などがあります。
このスポーツ障害は、スポーツによって関節や靭帯、腱、骨などに繰り返し外力が加わることで起こります。
スポーツ障害はトレーニング前にウオーミングアップやストレッチを行うこと、トレーニング後にクールダウン、アイシング、ストレッチを行うことなどで予防をすることができます。
また、予防だけでなくスポーツ障害の改善も期待できます。
スポーツ障害は初期の段階であれば、短期間の安静で改善し運動の再開は早期にできますが、悪化させてしまうと長期間の安静が必要となり、パフォーマンスの低下につながります。
スポーツ外傷
スポーツ外傷は大きな外力によって発症する外傷で、靭帯損傷、骨折、脱臼、捻挫、肉離れ、脳震盪などがあります。
膝関節のスポーツ障害とスポーツ外傷
膝関節はスポーツ中に怪我のしやすい部位の一つです。
膝関節は大腿骨と、脛骨、膝蓋骨の3つの骨で構成されており、大腿骨と脛骨がぐらつかないように外側側副靭帯、内側側副靱帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4つの靱帯が膝関節の安定に関与しており、外傷だけでなく使い過ぎによる障害などが起こりやすい部位です。
膝、膝周囲のスポーツ障害には、疲労骨折、ジャンパー膝、アキレス腱炎、オスグッド病などがあります。
膝、膝周囲のスポーツ外傷には、靭帯損傷、靭帯断裂、半月板損傷、捻挫、骨折、脱臼、打撲(骨挫傷)、肉離れなどが考えられます。
膝の痛みに対する緊急度
緊急性あり(早急に病院へ受診が必要)
膝が痛みだした時の症状で、
- 歩けるか?
- 痛い方の足に体重ががかけられるか?
- 膝が曲がるかどうか?
の確認をします。
歩けない、体重がかけれない場合には、骨折や靭帯損傷などが疑われる為、早急にRICE処置を行い、整形外科等へ受診が必要となります。
症状や怪我の状態にもよりますが、RICE処置は添え木で固定や氷などで冷やすなどの処置です。
膝が曲げれない、痛みのために屈伸ができない場合には半月板損傷や、膝蓋骨の脱臼などが疑われます。伸ばしたまま、または一定の角度に曲げたままで、動かさず整形外科へ受診が必要となります。
やや緊急性あり(早めに病院へ受診が必要)
- 膝の屈伸がしにくい場合
- 膝を外反、内反した時に痛みがある場合
- 膝周りが腫れが引かない場合
膝が痛みだした時の症状で、歩けない、痛い方の足に体重がかけれない、膝が曲がらない程の痛みではないが、膝の屈伸がしにくい場合では、急ぎではありませんが、整形外科へ受診が必要です。
膝の屈伸を45度以上できれば、1〜2日様子を見て、曲がらない状態や痛みが続く場合には病院への受診が必要です。
また、膝を外反、内反した時に膝の内側や外側に痛みがある場合では、靭帯損傷ね場合もありますので痛みが引かない場合は、整形外科等へ受診が必要です。
さらに、膝周囲の腫れが引かない場合には、膝の関節内が出血している場合もあります。特に腫れた場所がプヨプヨしていたり、コツコツと骨が当たる感じがする場合には注意が必要で、関節内の骨の骨折、半月板の損傷が疑われますので、2〜3日経過をみて、軽快しない場合には整形外科等を受診してください。
緊急性なし
膝の屈伸に異常がなく、膝周辺のみの腫れや痛みの場合は、うちみで異常がない場合が多くシップなどをはり、安静にしていればいい場合が多いです。
もし、痛みや腫れが一週間以上続く場合は整形外科等の受診をおすすめします。
膝の痛みを軽減するには
ランニング中に膝の痛みを感じることランナーにとって深刻な問題となる場合があります。膝の痛みを軽減するためのいくつかの対処法を紹介します。
正しいランニングシューズの選択
ランニングシューズは、足と膝を守るために重要です。膝の痛みを軽減するためには、自分に合った適切なランニングシューズを選ぶことが重要です。適切なシューズを選ぶためには、ランニングシューズ専門店でアドバイスを受けることをおすすめします。
ストレッチ ランニング前に行うストレッチ
膝の痛みを軽減するために非常に重要です。膝関節周辺の筋肉をストレッチすることで、筋肉が柔らかくなり、膝にかかる負荷を軽減することができます。
強化運動
膝を支える筋肉を強化することは、膝の痛みを軽減するために非常に重要です。特に、大腿四頭筋とハムストリングスを強化することが効果的です。
適度な運動
ランニングの過剰な運動は、膝に負担をかけるため、膝の痛みを引き起こすことがあります。適度な運動を心がけ、無理な負荷をかけないようにしましょう。
休息
膝の痛みを軽減するためには、十分な休息が必要です。ランニングをする前後に十分な休息をとり、膝に十分な時間を与えましょう。
これらの対処法は、膝の痛みを軽減するための有効な方法ですが、症状が重度な場合は、医師や理学療法士に相談することをおすすめします。
膝周囲のスポーツ障害
膝、膝周囲のスポーツ障害には、疲労骨折、ジャンパー膝、アキレス腱炎、オスグッド病などがあります。
疲労骨折
疲労骨折は大きな外傷でおこる通常の骨折とは異なり、同じ部位(骨)に繰り返しのストレスや負荷が加わることにより、骨にひびがはいったり、ひびが進行して骨折となってしまう状態をいいます。主にスポーツ選手やランナーなどのスポーツをする人に多く見られ、膝の痛みや腫れ、熱感、運動時の不快感などの症状が現れます。
疲労骨折の治療は安静にすることが重要です。一時的な対処療法としては、スポーツや激しい運動を中断し、痛みを抑えるために氷や湿布、痛み止めの薬を使用します。また、物理療法やストレッチング、マッサージなどを行い、筋力を強化することで、再発を防止することができます。
しかし、症状が重い場合には、手術が必要な場合もあります。治療方法については、症状の重さや患者の状態によって異なるため、医師の指示に従うことが重要です。また、治療後にも、スポーツや激しい運動を再開する際には、徐々に負荷をかけるようにし、再発を防止するための予防策を講じることが大切です。
疲労骨折の頻度が高い部位は、第2中足骨といわれています。中足骨の他に、下腿骨(脛骨や腓骨)、肋骨、足関節内果、尺骨、大腿骨、腰椎なども頻度が多く、
疲労骨折により疼痛などの症状が発生します。
ジャンパー膝
ジャンパー膝は膝蓋腱炎とも呼ばれています。膝蓋腱は膝蓋骨から脛骨粗面に付着している腱です。
ジャンパー膝の原因は膝蓋腱の膝蓋腱の負荷により、血管が余計に増えることといわれています。
例えば、ジャンプ、着地などの動作時の膝蓋腱が引っ張られる時に、負担が強くかかった時に膝蓋腱に小さな傷が生じ、この傷を治すために血管が増えてしまいます。通常は、傷が治ると増えた血管も消滅しますが、負担を繰り返すと、傷が治る前に新たに損傷ができてしまい増え続けてしまいます。血管が増えると、神経線維も増えて痛みの原因になります。
膝蓋腱の負荷となる動作には、ジャンプ、着地、ダッシュ、ストップなどの動作があります。
特に中学生や高校生の部活動などでは競技レベルが上がってくるため発症リスクが高くなる傾向にあります。
アキレス腱炎(アキレス腱周囲炎)
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨(踵骨)を結ぶ腱です。
アキレス腱炎は、ランニングやジャンプ等の動作を繰り返すことによってアキレス腱に生じる障害の1つです。 一般的に、走るや跳ぶなどの動作時に痛みを感じ、アキレス腱を押した時に痛みが生じます。特にスポーツ選手に多く見られます。
アキレス腱炎の症状は、ふくらはぎの痛みや腫れ、強い痛みを伴う運動制限がなどあります。痛みが強くなると、歩行にも影響を与えることがあります。ひどくなると、アキレス腱が腫れたり、動かした時にパチパチとなったり、歩行や階段昇降もできなくなる事もあります。
治療には、安静や運動制限、炎症を鎮めるためのアイシングなどの自己治療や、物理療法、ストレッチング、マッサージ、電気療法なども有効です。痛みが強い場合には、炎症を抑えるための薬物療法が必要な場合もあります。
予防には、激しい運動をする前に十分なウォーミングアップやストレッチングを行い、筋肉を十分に伸ばすことが重要です。また、靴の選択や足のサポートを行うための専用の靴下やシューズも役立ちます。
アキレス腱炎は、適切な治療を行うことで回復することができますが、炎症が放置されたままだと慢性化してしまう場合もあります。早期の治療が重要であり、症状が出た場合には運動を中断し、医師の診断を受けることをおすすめします。
オスグッド
オスグッドは、正式には、オスグッド・シュラッター病といいます。
オスグッドの概要
発育期のスポーツ障害として知られており、成長期でスポーツをよくする人に多い疾患です。オスグッドは、膝蓋骨の下にある脛骨粗面が隆起して腫れや痛みが現れます。膝を曲げるときに痛みを感じることが多く、悪化すると歩くことも困難となる場合もあります。
オスグッドの痛みの原因
大腿の前面にある大腿四頭筋が収縮し脛骨結節を引っ張ることで曲げる動作が行えます。成長期の子どもでは、軟骨の部分が多く弱いため、筋肉が繰り返し骨を引っ張ることによって軟骨の一部が剥がれてしまい、腫れや炎症が起き、痛みが現れてしまいます。骨まで剥がれてしまうと剥離骨折となり激痛を伴います。
膝周囲のスポーツ外傷
膝、膝周囲のスポーツ外傷には、靭帯損傷、靭帯断裂、半月板損傷、捻挫、骨折、脱臼、打撲(骨挫傷)、肉離れなどが考えられます。
靭帯損傷、靭帯断裂
膝の靭帯には外側側副靭帯、内側側副靱帯、前十字靭帯、後十字靭帯があり、膝周りに腸脛靭帯、膝蓋靭帯などがあります。これらの靭帯が膝関節の安定や膝関節の動きにに重要な役割をしています。
靭帯の位置は、膝の内側に内側側副靱帯、外側に外側側副靱帯、脛骨の前方から大腿骨側に前十字靱帯、脛骨の後方から大腿骨側に後十字靱帯があります。
身体の役割は、外側側副靱帯、内側側副靱帯は、膝が左右にグラつくのを抑えています。前十字靱帯は膝から下が前方へ異常に出過ぎないように抑えています。後十字靱帯は膝の全体の安定性を保っています。
膝の靭帯損傷は、膝関節へ外力が加わることで靱帯が損傷して痛み等の症状が出現する疾患です。外力が大きいと単独でなく複数の靱帯に損傷をきたしてくることもあります。2箇所以上の靱帯が損傷を受けた場合、膝複合靱帯損傷ともいい、1箇所の靭帯損傷よりも関節が不安定となり、半月板の損傷や軟骨の損傷を合併することが多くなると言われています。
半月板損傷
半月板は膝関節(大腿骨と脛骨の間)にあるC型をした線維軟骨の板です。膝関節の内側・外側にあり、それぞれ内側半月板・外側半月板といいます。
半月板は、膝にかかる荷重を分散したり、衝撃を吸収したりする(クッション)役割をしています。亀裂や欠けたりして損傷すると、膝を曲げた時や伸ばした時に痛みやひっかかりを感じます。場合によっては、膝に水(関節液)がたまったり、ロッキングと言われる急に膝が動かなくなる状態になる場合もあります。
慢性化すると変形性膝関節症を引き起こす可能性もあります。
半月板損傷の詳細
膝捻挫
膝関節に力が加わり通常の可動域を超えて骨が動いた時に起こるケガをいい、関節を支える靭帯や関節包などの軟部組織や、軟骨が損傷することをいいます。医学用語による定義では、異常な外力により関節包や靭帯の一部を損傷していても、関節面相互の適合性が正常に保たれている状態をいいます。
関節の腫れ、痛みなどが主な症状です。
膝の捻挫の詳細ランニング中のケガ〜捻挫、脱臼編〜
骨折
骨折は、外部から瞬間的に強い力が加わることにより起こり得ます。完全に折れてずれる骨折やずれのない骨折、ひびの状態の骨折などがあります。
腫れ、内出血、圧痛(押したときの痛み)、轢音(骨折部が動く音)、変形などが主な症状です。
骨折は、大きくわけて、閉鎖性骨折、開放骨折などに分けられます。
骨折の詳細
膝蓋骨脱臼・亜脱臼
膝周囲で起こる脱臼は、膝蓋骨の脱臼がほとんどとです。膝蓋骨の脱臼は、膝関節にある膝蓋骨が本来の位置からずれることで、大腿骨に対して膝蓋骨がはずれてしまう状態です。通常膝蓋骨は大腿骨の溝にはまり込む様に位置しており、この溝を越えてしまいはずれることを脱臼と言いいます。
多くは膝の外側への脱臼で、内側への脱臼は非常にまれです。乗り越えるまではいかず、ずれることを亜脱臼と言います。また、先天的に、大腿骨の溝が浅い人や、膝蓋骨の形成不全、膝蓋腱の付着部が外側に偏位しているなどの人に起こりやすいです。外傷による場合だけでなく、膝蓋大腿関節の先天的な形態の異常、関節弛緩性、軟部組織のバランス異常などが原因となり膝蓋大腿関節から膝蓋骨がずれてしまう事もあります。
ランニング中のケガ〜捻挫、脱臼編〜
打撲(骨挫傷)
打撲(骨挫傷)とは、衝突や転倒などの強い衝撃によって、筋繊維や血管が損傷することをいいます。激しくぶつかり合うスポーツで多く発生します。
(サッカーやラグビー、格闘技など)
圧痛(軽度)、腫れ、熱感のある痛み、内出血などが主な症状です。
打撲(骨挫傷)の詳細
ランニング中のケガ〜打撲(骨挫傷)編〜
その他
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、なんらかの原因で、膝の関節軟骨がすり減ったり、弾力がなくなることにより関節が変形してしまうことをいいます。
体重や加齢などの影響や外傷などにより膝への負担がかることなどが原因の事が多いと言われています。
男性よりも女性に多く、さらに高齢者になるほど変形性膝関節症の罹患率は高くなります。