ランニングと骨折〜骨盤部の裂離骨折〜

成長期の骨には成長軟骨があり、この成長軟骨がスポーツなどによる筋肉の急激な収縮により引っ張られると、その部分で骨が剥がれてしまうことがあります。

筋肉や腱に引っ張られ成長軟骨が剥がれてしまう事を裂離骨折といいます。

骨盤の骨にも成長軟骨があり、全身の中でも裂離骨折が起きやすい部位とされています。

一般呼称として剥離骨折ともいいます。

裂離骨折とは

剥離骨折とは、靭帯、筋肉、腱が急激に収縮することで成長軟骨がはがれ落ちてしまう骨折をいいます。成長軟骨は骨を成長させてくれる働きがありますが、列離骨折はの起こりやすい場所でもあります。

列離骨折は、主にスポーツ活動によって起こる事が多く、骨盤や足関節、膝関節などに生じやすいと言われています。特に骨盤部はランニングや、サッカー、ジャンプ、キックなどによって引き起こされます。

特に、成長期の中学生の年齢では、骨が成長する時期で、骨の長さが伸びると筋肉は骨に対して短くなります。そのため筋肉は常に緊張した状態となり、常に成長軟骨が引っ張られる状態になるため裂離骨折が生じやすくなります。

骨盤部の裂離骨折

成長期の中学生や高校生の骨盤には骨端線という成長軟骨があり、裂離骨折はこの骨端線で起こるのが特徴です。

骨盤部では比較的裂離骨折は多く生じています。特に、力学的強度が弱い成長軟骨(骨端線)で起こりやすいです。

骨盤部で裂離骨折が起こりやすい場所

骨盤部で裂離骨折が起こりやすい場所は、上前腸骨棘、下前腸骨棘、坐骨結節部、腸骨稜です。

上前腸骨棘の裂離骨折

上前腸骨棘の裂離骨折は、ダッシュや走り幅跳びなどで縫工筋や大腿筋膜張筋が収縮することでおこります。

下前腸骨棘の裂離骨折

下前腸骨棘の裂離骨折は、短距離走やキックの動作などで大腿直筋が収縮することでおこります。

坐骨結節部の裂離骨折

坐骨結節部の裂離骨折は、全力疾走やハードル、走り幅跳びなどの跳躍でハムストリングや大内転筋が収縮することおこります。

腸骨稜の裂離骨折

腸骨稜の裂離骨折は、柔道で投げの動作、野球でスイングの動作など両下肢を固定した状態で体幹を急にひねる時など、腹横筋、内外腹斜筋の牽引がおこるときにおこります。

この中では、上前腸骨棘の裂離骨折がもっとも多く約50%程度おこり、次いで下前腸骨棘の裂離骨折が約30%、坐骨結節•腸骨稜の裂離骨折、がそれぞれ10%程度があると考えられます

裂離骨折の症状

裂離骨折の症状は、痛みや腫れです。重症の場合は感覚障害や歩行困難などの症状が現れます。

裂離骨折の一般的な治療と経過

ほとんどの場合は保存的に治療となるさりますが、骨折による骨のずれが大きい場合は手術が必要になります。

上•下前腸骨棘の裂離骨折

この部位の裂離骨折は、骨が大きく転位することが少ないため、骨折部位を安静にする必要があります。一般的には、松葉杖を使い負荷をかけないようにします。歩行時の痛みがなくなってから、徐々に可動域訓練と筋力訓練のリハビリを行い、4~6週程度で、少しずつスポーツ復帰し、2〜3ヶ月程度で運動復帰できるといわれています。

坐骨の結節の裂離骨折

この部位の裂離骨折は、骨癒合が遅れやすく、骨癒合となるまで4か月近くかかります。

腸骨稜の裂離骨折

この部位の裂離骨折は、6~8週で骨癒合となり、スポーツ復帰が可能となります。

いずれの裂離骨折の場合でも、スポーツ復帰の時には、股関節周囲の筋肉のストレッチを行うなど柔軟性を高める必要があります。

まとめ

ランニング、ダッシュ、ジャンプ、キックなどによって引き起こされる裂離骨折は、力学的強度が弱い成長軟骨(骨端線)で起こります。特に、上前腸骨棘の裂離骨折は比較的多く報告されています。

多くの場合、治療は安静にすることですが、稀に入院、手術が必要とはなる場合もあります。

スポーツ復帰の際には股関節周囲の筋肉のストレッチを十分に行い、柔軟性を高めておく必要があります。

早めに適切な治療を受けることが大切ですので、骨盤部の痛みがある場合は早めに医療機関へ受診する事をおすすめします。

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Posted by takacyan