ランニング中の怪我とRICE 処置
ランニングやマラソン大会で走る時には、膝の痛みや、足首の捻挫、転倒による怪我、肉離れなど、常に怪我のリスクがあります。いくら予防をしたとしてもリスクを減らす事は出来ても100%の予防をすることは不可能です。そのため、不意に起こる怪我に対しての処置を知っておくと、いざという時に役に立ちます。
ランニングに限らず、スポーツ活動中におこる怪我には大きく分けて、外部から力が加えられて起こる怪我と、スポーツで同じ動作を繰り返すことにより骨や筋肉、靱帯などの痛みが起こるものがあります。
スポーツ外傷とスポーツ障害
スポーツ中に外部から力が加えられて起こる怪我をスポーツ外傷
スポーツで同じ動作を繰り返すことにより骨や筋肉、靱帯などの痛みが起こるものをスポーツ障害
といいます。
主な体の症状は、疼痛や腫脹、熱、発赤、障害(動き)です。
- 疼痛は損傷部位の痛み
- 腫脹は損傷部位とその周囲の腫れ
- 熱は損傷部位を中心とした熱(熱感)
- 発赤は損傷部位の充血やうっ血
- 動きの障害は動きが正常に出来ない、反応が出来ない
です。
マラソンやランニングでのケガ
ランニングやマラソンのけがは脚に関係するケガが多くあります。
人が走る時には脚に大きな負担がかかりますのでランニング、マラソンだけでなく運動するときには準備運動、正しい動き、普段のストレッチなどがケガのリスクを減らすための予防策となります。
しかし、何らかの原因でケガをしたり、痛みなどの違和感があったりすることもあり、早めに対処が必要となる事もありますしましょう。
ランニングやマラソンでは、
- 肉離れ
- 捻挫
- シンスプリント
- ランナー膝(腸脛靱帯炎)
- 足底筋(腱)膜炎
- 熱中症
- 貧血
などがよく見られる症状で、これらのケガや症状に対して早めに対処を行うことで、日常生活の動作やスポーツへの復帰が早められます。治癒の促進にもつながります。
スポーツ外傷のRICE 処置(応急処置)の概要
運動中に怪我をしたときに、医療機関にかかるまでの間に行う処置を応急処置(RICE 処置)といい、
怪我(損傷)部位の障害を最小限にとどめるためにおこない、適切な処置が行われると、日常生活の動作やスポーツへの復帰が早められます。治癒の促進にもつながります。
しかし、処置が不適切であると日常生活の動作やスポーツへの復帰を遅れさせてしまいます。
具体的には、打撲や捻挫など運動中に起きやすい怪我に対して対応できる処置方法で、打撲や捻挫による痛みや腫れの悪化を防ぎ、治りも早める事を目的に行います。
RICE 処置は、あくまで医療機関へ行くまでの応急処置ですので治療方法ではではない事は覚えていてください。また、場合にもよりますが、創傷(傷)の場合はRICE処置よりも創傷部の処置を優先して行うことも必要となります。
RICE 処置(応急処置)の目的と方法
RICE 処置(応急処置)の目的
RICE処置の目的は、捻挫や肉離れ、骨折などの受傷の後の3~4日(出血や腫脹が助長される期間)に早急に処置を行い治癒を早める事です。また、早く炎症反応を抑えるために行う応急処置です。
初期の処置が適切に行われればすぐに軽快してしまう様な受傷でも、運動負荷をかけてしまうと、腫れや痛みが強くなり治癒がおそくなります。炎症反応は長く続くと怪我は悪化してしまいますので早期の処置が必要となります。
一般的には、筋肉や靭帯の修復には3週間程度、骨折(部位や損傷程度にもよります)の完全癒合には3~12か月程度の期間がかかります。炎症反応は、筋肉や靱帯、腱、骨などを怪我をした時に起きます。主な症状としては、疼痛や発赤、腫脹、機能低下などです。
少しでも治癒を早めるには、受傷後の出血や腫脹を最小限に抑え、血液循環の早期回復をうながす事により損傷部位の修復の促進わ促す必要があります。この初期の処置がRICE処置です。
RICE 処置(応急処置)の方法
外傷を受けたときなどの緊急的な処置は、
Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)が基本となります。
RICEはこれらの頭文字をとったものです。
RICE 処置は、外傷を受けた時の患部の出血や腫脹、疼痛を防ぐことを目的ですので、主に捻挫や肉離れなどの四肢の怪我に対してに行います。
Rest(安静)
怪我をした損傷部位だけではなく、体全体を安静にし、怪我、痛みの悪化を防ぎます。また、
例えば、足首や膝の損傷の場合、安静にせず歩いたり、体重をかけるようなことをすることにより、痛みが増したりケガが悪化することがあります。
Ice(冷却)
損傷した部位を冷す事により、痛みを軽減したり、損傷部位の周辺の痛み(内出血や炎症)の広がりも抑えます。冷し方は、損傷部位やその周囲を氷で冷やします。冷やす時間の目安は15分〜20分ですが、氷の当てている時に冷えすぎによる痛みがでたり、感覚がなくなる状態になる場合は、いったん氷をはずし少し時間をおいてからまた、損傷部位に氷をあてます。冷却スプレーや、冷蔵庫、冷凍庫で冷やして用いるゲル状のものもありますので利用すると便利です。
冷えすぎないように冷やす事が重要です。
Compression(圧迫)
損傷部位の腫れや出血を抑えるために、弾力性の包帯(伸縮包帯)やテーピングなどで損傷部位を圧迫することです。
圧迫している時は常に、圧迫している部位の抹消の手や足の指の皮膚・爪の色感や覚に注意が必要です。もし圧迫が強すぎると、血流を悪くしたり神経を圧迫することがあるためです。圧迫している部位の抹消の皮膚が青くなったり、抹消がしびれる場合は、圧迫をいったんゆるめて少し時間をおいてから再び圧迫する事が重要です。
Ice(冷却)とCompression(圧迫)を同時に行うとより効果的な場合もあります。
Elevation(挙上)
損傷部位を心臓よりも高い位置に挙げることにより、腫れや出血、内出血を抑えます。
ケガをしたところを、できるだけ自分の心臓よりも高い所に持ち上げます。
RICE処置の方法(捻挫、骨折の時の具体例)
捻挫の時のRICE処置の具体例
足を捻ったり、外傷により捻挫を疑う時には、まずはIce(冷却)を行います。
捻挫は軽く見られがちですが、ひどいときには靱帯が切れている場合もあるので注意が必要です。特に足首の捻挫は放っておくと癖になりやすく、最初の処置が大切です。捻挫をしたらすぐにRICE処置を行います。捻挫した直後から痛みが引くまで、または、医療機関(整形外科)を受診するまで行います。
捻った直後、外傷を受けた直後に、迅速にIce(冷却)をすることで、内出血を少なくする事が期待できます。Ice(冷却)には、アイスバックや氷,アイススプレーを使用して行い、冷却時間,回数などは怪我の部位や程度によって異なるますが、30分以内を1日に3回,痛みが引くまでまたは、医療機関へ受診するまでを目安に行います。
(怪我の程度にもよりますのであくまで目安です。)
骨折(疑いを含む)の時のRICE処置の具体例
強い外傷を受け、骨折または骨折を疑う時には、まずはRest(安静)です。
骨折の有無は医療機関での診断が必須ですが、異常な腫れや関節や骨の異常な動きがある場合には骨折を疑う事ができます。骨折疑いを含み、Rest(安静)の基本は関節を固定する事です。関節が動かないように外傷部位の上下の関節を固定することが必要となります。
痛みが軽減できる姿勢でRest(安静)、固定を行いましょう。
(怪我の程度にもよりますのであくまで目安の処置の方法です。)
肉離れのPRICE処置
肉離れの受傷直後から48時間は重症度によらずPRICE療法を行い、リハビリテーションに繋げます。
・Protection(保護)
・Rest(安静)
・Ice(冷却)
・Compression(圧迫)
・Elevation(挙上)
PRICE処置とPOLICE
スポーツなどの外傷の緊急、応急処置の手当の基本は、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上) のRICE処置ですが、最近では、安静だけでは損傷した組織を保護できないという観点から、Protection(保護)を加えてPRICE処置が提案されています。
さらに、安静(Rest)を、Optimal Loading(最適な負荷)に置き換えたPOLICEという概念も提案されています。これは、急性損傷の早期管理として必要以上の固定、安静は悪影響を及ぼすという考え方からPOLICEが重要と言われています。
Protection(保護)は、装具やシーネなどで損傷組織を保護し、再受傷、悪化を防ぐことが目的です。
Optimal Loading(最適な負荷)は、早期に最適な負荷をかけることで最適な組織修復を促すことが目的です。早期の最適な負荷は治癒に関連するタンパク質の生成を促進し、修復の質を改善することで細胞応答を促進するといわれています。
適切な負荷を適切な組織に行うことにより、最適な組織修復が期待できます。
出血した時~止血と対処~
擦り傷に対する止血と対処
擦り傷は皮膚の表面の浅い傷のため、汚れがない場合の擦り傷であれば軽症で消毒液で消毒し清潔に保つことで十分です。
しかし、土や、砂で汚れている場合は、早くきれいに洗い流すために水道の流水でよく洗い、清潔なガーゼやタオルなどを当てて止血を行います。
その後は必要に応じて絆創膏を貼る等の処置を行います。
もし創部が広い場合には病院への受診をお勧めします。
切り傷に対する止血と対処
切り傷は、包丁、ナイフ、ガラスなどで切った直線的な傷のことをいいます。ランニング中においても切り傷は転倒時にガラスや釘など道に落ちているもので切創したり、鋭利なものにぶつかって切創したりするなど、多種多様な原因で切り傷ができます。
また、傷口も様々で対応方法も異なります。
一般的に、傷を負ったときには、傷口の形状に問わず、傷口を洗い流すことが重要です。
傷を負ったときには傷口が汚染されてしまわないように、消毒や軟膏を塗るよりも先に流水で洗浄してください。
流水は滅菌水は必要なく水道水で十分と言われています。しかし、出血がひどい場合には止血を優先して、その後流水で洗浄してください。
止血の方法は直接圧迫止血で、清潔なガーゼやハンカチなどを直接傷口に当てて手のひらで圧迫して止血してください。
まとめ
マラソンをはじめスポーツと怪我は切っても切れない関係です。もし怪我をした時に応急処置としてRICE 処置を正しく行うと、症状の悪化を防ぎ、損傷の早期回復につながります。軽い怪我や損傷の場合でも、正しい応急処置を行い、医療機関に受診し、必要な治療を受ける事をお勧めします。