三叉神経痛とマラソン〜ランナーのための徹底対策〜

三叉神経痛とは

三叉神経痛(さんさしんけいつう)は、顔の片側に突然、電気が走るような激しい痛みが生じる神経痛です。三叉神経は顔の感覚を司る神経で、第1枝(眼神経)、第2枝(上顎神経)、第3枝(下顎神経)の3つの枝に分かれています。この神経が血管や腫瘍などによって圧迫されることで、異常な興奮が起こり、痛みが発生します。

痛みは「電撃痛」や「突き刺すような痛み」と表現され、数秒~数十秒程度の短い発作が繰り返されます。歯磨き、洗顔、咀嚼、会話、冷たい風など、日常生活の動作で痛みが誘発されることが多いのが特徴です。

三叉神経の3つの枝とそれぞれの特徴

第1枝:眼神経(V1)

支配領域:おでこ(前頭部)、眉間、まぶた(眼瞼)、目の角膜、鼻の上半分など、顔の上部の感覚を司ります。

三叉神経痛の症状:おでこや眉間、目の周囲に電気が走るような鋭い痛みが現れます。洗顔や冷たい風が当たる、メガネや帽子をかけるなどの刺激で痛みが誘発されることもあります。

第2枝:上顎神経(V2)

支配領域:下まぶたから頬、鼻翼、上唇、上の歯茎、口蓋など、顔の中央部の感覚を司ります。

三叉神経痛の症状例:頬や上唇、鼻の横から耳にかけて鋭い痛みが走ります。食事や会話、洗顔、歯磨きなどが痛みのトリガーとなることが多く、歯の痛みと間違えられることもあります。

第3枝:下顎神経(V3)

支配領域:下顎、下唇、舌の半分、耳の一部、下の歯茎など、顔の下部の感覚を司ります。また、咀嚼筋(噛むための筋肉)の運動も支配しています。

三叉神経痛の症状例:下顎や下唇、舌に激しい痛みが現れます。咀嚼、会話、髭剃り、歯磨きなどで痛みが誘発されやすいです。痛みのために食事ができなくなり、痩せてしまう方もいます。

三叉神経痛の原因と種類

特発性三叉神経痛:三叉神経周囲の血管による圧迫が主な原因で、全体の約90%を占めます。

症候性三叉神経痛:多発性硬化症、脳腫瘍、脳血管障害など、血管圧迫以外の原因で生じます。

帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹の後遺症として発症することもあります。

三叉神経痛の治療法

薬物療法:第一選択薬はカルバマゼピン(テグレトール)などの抗けいれん薬です。副作用には眠気やふらつき、アレルギー反応などがあり、少量から開始し調整します。

神経ブロック注射:痛みの神経に直接薬を注射し、痛みの伝達をブロックします。効果は一時的です。

外科手術(微小血管減圧術):血管を三叉神経から離す手術で、根治的な治療法です。有効率は80~90%と高いですが、全身麻酔や入院が必要です。

ガンマナイフ(定位放射線治療):放射線を三叉神経に照射し、痛みを軽減します。手術が難しい場合に選択されます。

マラソンランナーが三叉神経痛を背負いながら走るための対策

寒さ・風対策の徹底

ネックウォーマーやマスクの活用:特に冬場や早朝・夜間の練習では、顔を冷やさないようネックウォーマーやマスク、帽子を着用しましょう。風が直接当たるのを防ぐことで、痛みの誘発リスクを減らせます。

保温性の高いウェアの選択:体全体の保温も重要です。保温性の高いランニングウェアを選び、体を冷やさないようにしましょう。

ウォーミングアップとクールダウン:練習前には十分なウォーミングアップを行い、練習後はクールダウンで体をゆっくりと冷ましましょう。急激な温度変化は痛みの誘発につながります。

ストレス・疲労管理の徹底

十分な睡眠と休息:睡眠不足や疲労は自律神経を乱し、痛みを感じやすくします。毎日7~8時間の睡眠を心がけ、練習後はしっかり休息を取りましょう。

ストレス解消法の実践:ストレスは痛みの大きなトリガーです。趣味や音楽、読書、入浴など、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。

練習計画の見直し:無理な練習計画はストレスや疲労の原因となります。体調に合わせて練習量を調整し、オーバートレーニングを避けましょう。

体調管理の徹底

バランスの良い食事:栄養バランスの良い食事を心がけ、免疫力を高めましょう。特にビタミンB群やマグネシウムは神経の健康に重要です。

こまめな水分補給:脱水は体調不良の原因となります。練習中はこまめに水分を補給しましょう。

体調不良時の練習中止:体調が悪いときは無理をせず、練習を中止しましょう。無理をすると痛みが悪化するリスクがあります。

痛みが誘発される動作の回避

顔を触らない:走行中に顔を触ったり、髪を整えたりする動作は控えましょう。

ランニング後の洗顔・食事の注意:レース後は疲れているため、洗顔や食事の際に痛みが誘発されることがあります。ゆっくりと動作を行い、無理をしないようにしましょう。

セルフケアの徹底

ツボ押し:下関(耳から指2本分前にあり、頬骨の下の窪み)や合谷(手の親指と人差し指の付け根)などのツボを押すことで、痛みの緩和やリラックス効果が期待できます。

ストレッチとマッサージ:顔や首、肩のストレッチやマッサージを行うことで、血流を改善し、痛みの予防に役立ちます。

姿勢の改善:姿勢を正し、身体の歪みを整えることで自律神経のバランスが良くなり、神経への刺激が軽減されます。整体や鍼灸も効果的です。

下半身の筋力アップ:しゃがむ動作を取り入れたトレーニングで下半身の筋力を強化し,体全体のバランスを良くしましょう。

三叉神経痛とマラソンのQ&A

Q. マラソン中に三叉神経痛が起こったらどうすればいいですか?

A. 無理をせず、速やかに練習やレースを中止し、医療機関を受診してください。痛みが強い場合は、鎮痛薬や抗けいれん薬の服用が必要となる場合もあります。

Q. 三叉神経痛があってもマラソンを続けられますか?

A. 痛みがコントロールできていれば、マラソンを続けることは可能です。ただし、医師と相談し、体調管理や痛みのコントロールをしっかり行いましょう。

Q. マラソンで三叉神経痛が悪化することはありますか?

A. 寒さや疲労、ストレスがトリガーとなるため、体調管理が不十分だと悪化する可能性があります。十分な対策を講じましょう。

三叉神経痛を抱えるランナーの一言

冬のマラソン大会で顔に冷たい風が当たると痛みが出ることがありました。ネックウォーマーとマスクを着用してからは、痛みがかなり軽減されました。体調管理と医師との連携が大切だと実感しています。

三叉神経痛を抱えるランナーは、寒さや疲労、ストレスに特に注意が必要です。練習量やペースの調整、十分な休息と栄養管理を心がけてください。痛みが出た場合は無理をせず、医療機関に相談が重要となります。

栄養管理のポイント

ビタミンB群の摂取:玄米、豚肉、レバー、ナッツ類など

マグネシウムの摂取:海藻類、大豆製品、バナナなど

水分補給:練習前・中・後にこまめに水分を摂る

まとめ

三叉神経は第1枝(眼神経)、第2枝(上顎神経)、第3枝(下顎神経)の3つに分かれ、それぞれ顔の上部・中央・下部の感覚を支配しています。三叉神経痛はどの枝が障害されるかによって症状の現れる場所や特徴が異なるため、マラソンランナーは自分の症状が出やすい部位に合わせて予防策を徹底しましょう。

※本サイトは症状がある場合には医療機関の受診を推奨しています。自己判断での治療や無理な運動は控えてください。

※三叉神経痛の症状や治療法は個人差があります。気になる症状がある場合は、必ず専門医にご相談ください。

健康

Posted by takacyan