ランニング後のハムストリング(太もも裏)痛〜原因・セルフケア・予防トレーニング〜
走るたびに太もも裏が張る、スピード練習の翌日にハムストリングが痛む・・・。
そんな悩みを抱えるランナーはとても多く、ハムストリング痛・肉離れ・高位ハムストリング腱障害は、ランニング障害の中でも特に再発しやすいトラブルの一つです。
このページでは、ハムストリングの痛みに悩む市民ランナーに向けて、原因・セルフチェック・治療・再発予防トレーニングまでを、医学的知見と実際のランニング経験からわかりやすく解説します。
ハムストリングの構造と役割
ハムストリングとは、太もも裏にある3つの筋肉群の総称です。
- 大腿二頭筋(外側):スプリントや坂道走で強く働く筋肉。
- 半腱様筋・半膜様筋(内側):膝の安定性や骨盤コントロールに関与する筋肉。
これらはいずれも骨盤の坐骨(坐骨結節)から始まり、膝下の脛骨や腓骨に付着します。主な働きは、股関節を伸ばす・膝を曲げる動作です。ランニング中ではスイング後半(脚を後方に蹴り出す局面)で最も強く使われます。
ハムストリングの痛みの原因と痛みの程度
ハムストリング痛は、「筋疲労」と「姿勢・動作のアンバランス」が複合して起こることが多いです。
- 過剰な筋負荷やエキセントリック収縮
エキセントリック収縮は、ブレーキをかけながら力を出している筋肉の働きで、スピード練習や坂道ダッシュで、筋肉が伸びながら強く働くと細胞レベルの損傷が発生します。翌日の筋肉痛から、強いものでは肉離れに至ることもあります。
例えると、スクワットで「しゃがみながらゆっくり耐える動き」や、坂道や下りでスピードが出すぎないように太ももで踏ん張っているときの筋肉の使い方がこれにあたります。 - 骨盤・股関節の可動制限
長時間の座位やフォームの崩れにより腸腰筋が硬くなると、骨盤が前傾しハムストリングが常に引き伸ばされます。結果として、走行時の衝撃が集中しやすく、慢性的な張りや坐骨付近の痛みにつながります。 - 殿筋・体幹の機能低下
股関節を動かす際に大殿筋がしっかり働かないと、代わりにハムストリングが過剰に働きます。これにより「太もも裏だけ疲れる」「お尻の筋肉が使えない」といった状態になり、慢性化するケースが多いです。
フォームの癖と負担の関係(ハムストリングの痛み)
ハムストリングに負担をかけやすいランニングフォームの特徴は以下の通りです。
- 着地が体の前方に出ており、毎回ブレーキ動作になる。
- 骨盤の動きが固定され、脚を後方に伸ばせていない。
- ピッチが少なく、ストライドを無理に広げている。
フォームの改善には、ランニング動画撮影やランニングウォッチ(ピッチ・接地時間・左右バランス解析など)のデータ分析が有効です。

ハムストリングの痛みのセルフチェック
セルフチェックでわかる痛みの程度(ハムストリングの痛み)
痛みや張りの強さをセルフチェックすることで、治療や練習の判断がしやすくなります。
- 太もも裏やお尻の付け根を押すと痛む。
- 立位体前屈・片脚デッドリフトで突っ張る感覚がある。
- 走ると徐々に痛みが強まる、または夕方以降に重だるさを感じる。
鋭い痛み、歩行時痛、腫れ、内出血などがある場合は肉離れの可能性が高く、整形外科を受診しましょう。軽度の場合でも、痛みを我慢して走り続けると高位腱障害に進行するリスクがあります。
セルフケアと治療の進め方(ハムストリングの痛み)
痛みの程度に応じて、次のように段階的にケアを行うことが基本です。
軽度(筋肉痛・違和感)
- ハムストリングストレッチ(15〜30秒×3セット)
- フォームローラーでの筋膜リリース
- 軽いジョグやウォーキングによる血流促進
中等度(押すと痛む、走行時も不快)
- ストレッチやリリースは控えめにし、温熱療法で循環改善
- ハムストリングの保護のため、レッグカールなど低負荷の筋トレで再教育
- 徐々にエキセントリックトレーニングへ移行
高度(肉離れ・強い痛み)
- 無理にストレッチせず安静を優先
- 医療機関での診断・超音波検査を受け、損傷部位を特定
- 低周波治療・固定・段階的リハビリを実施
再発予防トレーニング(ハムストリングの痛み)
ハムストリング痛の根本解決には、「ハムを強く、殿筋をうまく使う」ための筋トレが重要です。
代表的なエクササイズには以下があります。
- ノルディックハムストリングカール:
- ハムストリングの伸張時筋力(エキセントリック力)を高め、肉離れの再発予防に有効。
- ルーマニアンデッドリフト(RDL):
- 股関節を軸に骨盤と体幹を安定させながら、太もも裏を効率良く刺激。
- ヒップスラスト・グルートブリッジ:
- 大殿筋を主動筋として働かせ、ハムストリングへの負担を分散。
- シングルレッグデッドリフト:
- 片脚でバランスと骨盤安定性を鍛え、フォームの左右差を改善。
まとめ
ハムストリング痛は、単なる筋肉トラブルではなく、体幹・股関節・フォームの全体バランスに関わるランニング障害です。
根本改善のためには、「痛めた部位を回復させる」だけでなく、「再び痛めない体の使い方」を身につけることが最も重要です。
自分のフォーム・筋力・可動域を見直しながら、再発しにくい走り方を手に入れましょう。
ハムストリングの痛みのFAQ
Q1. ランニング後に太もも裏が張るのは走りすぎでしょうか?
A. 毎回のランニング後に強い張りや痛みが出る場合は、走行距離やスピード練習の負荷が高すぎる可能性があります。翌日も痛みが残るようなら、1〜2日は強度を落としてジョグ中心に調整しましょう。
Q2. 肉離れかどうか自分で見分けるポイントはありますか?
A. 「ぶちっ」とした感覚があった、急に強い痛みで走れなくなった、押すと一点が強く痛い、内出血や腫れがある、といった場合は肉離れが疑われます。この場合はストレッチを控え、整形外科の受診をおすすめします。
Q3. 高位ハムストリング腱障害(お尻の付け根の痛み)はストレッチで良くなりますか?
A. 高位ハムストリング腱障害では、過度なストレッチはかえって腱へのストレスを増やす場合があります。まずは殿筋や体幹の筋力強化と姿勢改善を優先し、痛みが落ち着いてから軽いストレッチに移行するのが安全です。
Q4. どのくらい休めば走っても大丈夫ですか?
A. 目安としては、日常生活でほぼ痛みがないこと、ジョグや階段昇降で痛みが出ないこと、片脚でのハムストリングエクササイズで左右差が少ないことが条件になります。再開時は平地のゆっくりしたジョグから始め、スピードや坂道は数日〜数週間かけて段階的に戻します。
Q5. ノルディックハムストリングはどのくらいの頻度で行えば良いですか?
A. 週2〜3回、1回あたり2〜3セットを目安に、フォームを崩さない範囲の回数で行うと効果的です。研究では、ノルディックハムストリングを継続することでハムストリング肉離れの発生率が約45〜50%低下したと報告されています。