マラソンと頭痛〜一次性運動時頭痛〜
ランニングやマラソンなどの運動中や運動後に頭が痛くなる事はありませんか?
走ったり、筋トレなどの運動の時におこる頭痛に苦しんで、練習が嫌になってしまうこともあります。この運動中や運動後に生じる頭痛は労作性頭痛と言われる頭痛であることが多く、多くの頭痛は一時的なもので休んだりすると治る特徴があります。しかし、中には重篤な病気が潜んでいることもありますので、頭痛の原因や種類・対処法について理解しておく事が大切です。
頭痛の種類
頭痛は大きく2種類に分ける事ができます。
1つ目は、一次性頭痛
2つ目は、二次性頭痛
です。
一次性頭痛は、明らかな病変がなく心配のない頭痛で、「片頭痛」や「緊張型頭痛」「群発頭痛」などがありす。運動によって誘発される頭痛に一次性運動時頭痛があり一次性頭痛に分類されます。
二次性頭痛は、命に関わるような重篤な病気が原因となる「くも膜下出血」「脳腫瘍」「髄膜炎」などがあります。
一次性頭痛
一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、三叉神経自律神経性頭痛、その他の頭痛などにより引き起こされる頭痛です。
片頭痛
片頭痛は、こめかみから目のあたりが、ズキズキと脈に合わせるようなリズムで痛む頭痛です。
症状 | 個人差もありますが、吐き気、嘔吐、光・音・気圧や温度の変化に対して敏感になるなどの症状が現れます。 |
頻度 | 1ヵ月に1~2度から1週間に1度など、個人差はありますが、周期的に痛みが起こることが多いです。 |
特徴 | 体を動かすことにより痛みが増し、日常生活に支障を来たすこともあります。 比較的20代~40代の女性に多く、生理前から生理中にかけて頭痛が起こることが多いと言われています。 |
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、身体的や精神的なストレスが複雑に関係して発生すると考えられています。
身体的ストレスによる頭痛はおもに、無理な姿勢、長時間のパソコンの使用などで、頭から肩にかけての筋肉が緊張し血流が悪くなり疲労物質が筋肉にたまり痛みを引き起こすと考えられています。
精神的ストレスによる頭痛はおもに、身体的ストレスとは異なり精神的に緊張した状態が長期間続いた時に、脳の痛みを調整する機能が不全を起こし頭痛を引き起こすと考えられています。
群発頭痛
群発頭痛は、頭痛の一種で、非常に激しい頭痛を引き起こす神経系の障害です。群発頭痛の特徴的な症状は、一日に何度も、同じ時間帯に頭痛が発生することです。痛みは、目の周りや額、頭の側面などに局所化され、非常に激しく、突発的に襲ってくるとされています。痛みは、しばしば目の赤み、涙目、鼻水、目やに、顔の腫れなどとともに現れることがあります。
群発頭痛は、神経系の異常が原因で発生するとされていますが、具体的な原因はまだ完全には解明されていません。遺伝的要因が関与していることも示唆されています。
群発頭痛の治療には、痛みを和らげるための薬物療法、酸素療法、神経刺激療法、手術療法などがあります。治療方法は、個人に合わせて選択されることが多いです。治療法によっては、症状を軽減することができることがありますが、完全に治すことは難しいとされています。
三叉神経自律神経性頭痛
三叉神経自律神経性頭痛は、三叉神経と自律神経系に関係する神経障害によって引き起こされる頭痛の一種です。この痛みは、片側の顔面や頭部に局在し、非常に激しい刺すような痛みを引き起こします。
三叉神経自律神経性頭痛は、一般的には周期的に発生するとされており、発作的な痛みが1回から複数回まとめて数日間続くことがあります。痛みの発作は、通常30分から2時間続き、しばしば眼の周りの筋肉の痙攣、涙目、鼻づまり、鼻水、目の充血などの症状が伴います。
三叉神経自律神経性頭痛の原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因が関与しているとされています。また、ストレス、睡眠不足、過度の身体活動、食物の摂取などが発作を引き起こす可能性があります。
三叉神経自律神経性頭痛の治療には、薬物療法、神経ブロック、神経刺激療法、手術療法などがあります。治療方法は、症状の程度や頻度、患者の状態によって異なります。治療によっては、症状を軽減することができますが、完全に治すことは難しいとされています。
二次性頭痛
二次性頭痛は、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、髄膜炎・脳炎などによりひきおこされ、脳に異常があり頭痛がおきる頭痛です
くも膜下出血
くも膜下出血は脳表面のくも膜と脳の空間である、くも膜下腔にある血管が切れて起こる出血です。(くも膜下腔には脳脊髄液が存在ています。)
くも膜下出血の原因は、80~90%が脳動脈瘤からの出血です。
脳出血
脳出血は脳の血管が破れて脳内出血している状態で、出血を起こした場所や程度によって症状、後遺症などが異なります。多くの場合は、高血圧性脳出血で、高血圧、動脈硬化などによる血管が原因となって発症すると言われています。
- 主な症状 :出血を起こした場所や程度によって異なりますが、主な症状は頭痛、手足の麻痺、嘔吐、意識混濁です。
- 主な原因:高血圧+動脈硬化、動脈瘤の破裂、血管腫、動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、脳腫瘍などがあります。
- 主な出血の部位:視床出血、被殻出血、小脳出血、脳幹出血、皮質下出血などがあります。
一次性運動時頭痛
一次性運動時頭痛は運動によって誘発される1次性頭痛で、運動などにより、体の動きが誘因となり頭痛が生じるため一次性運動時頭痛といわれています。以前は一次性労作性頭痛とも呼ばれていました。
ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、持続的な運動によって引き起こされる拍動性頭痛です。また、体動、咳、暑さ、寒さ、高地で悪化することも特徴です。比較的40歳以上の人に多く、男性より女性に多く、片頭痛の合併率が高いと言われています。
国際頭痛分類では、激しい身体的な運動中又は、運動後にのみ誘発されて起こり、48時間未満の持続の頭痛が2回以上ある事が診断の目安となっています。この頭痛は、くも膜下出血などの二次性頭痛の場合もあるため注意が必要です。脳の重大な病気を除外した上で診断されるとされています。
類似する頭痛として、咳やいきみで誘発される咳嗽性頭痛、性行為に伴う性交時頭痛などもあります。
運動時に頭痛が起こるわけ
では、なぜ運動時に頭痛が起こるのでしょうか?
運動時等に起こる一次性運動時頭痛の生じる原因として考えられているものは、
- 慢性頭痛が運動によって誘発
- 運動時の血流の増加
- 頸部の後ろの筋肉への過剰な刺激
- 脱水
- 酸欠
などですが、詳しい原因が解明されていません。
マラソンで考えると、脱水も酸欠も当てはまりますし、首、肩の筋肉への刺激もあるため、運動時頭痛は起こりやすいため、予防、対処方法を知っておく事も大切です。
ランニング時や筋トレ時に起こる頭痛
ランニング時や筋トレ時に起こる頭痛は、頭蓋内疾患がある場合を除いて、一次性運動時頭痛である事が多いと考えてられています。
頭痛は拍動性で両側性、持続時間は5分未満であると言われていますが長時間続くこともあります。
原因の多くは血管性であることが多く、運動により静脈、動脈が拡張することで痛みが発現するのではと考えられています。可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)であると言われています。
血管性以外には、急性緊張型頭痛、高血圧に伴う頭痛、脳圧亢進に伴う頭痛、無酸素脳症に伴う頭痛、もともとの頭痛(片頭痛等)が運動により誘発された頭痛などがあるといわれています。
一次性運動時頭痛の対処法
一次性運動時頭痛対処法の一例を紹介します。
(一次性運動時頭痛の原因が解明されていないため、対処法の効果を保証するものではありません。)
対処法の一つとして、頭痛薬などの薬を飲むことで頭痛が軽減が期待できます。また、ストレッチなどで、筋肉(特に首、肩周囲の筋肉)をほぐし、筋緊張を緩和する事も効果があります。また、一次性運動時頭痛は、運動によって引き起こされる頭痛のため、対処法は運動を制限して症状がでたらすぐ休むことです。
主な対処方法
- 運動量を調節する
- 水分補給を行う
- 運動前の十分なウォームアップをする
- 薬物療法
- 患部を冷やす
などがあります。
脱水にならないように、水分補給をこまめに行ったり、筋トレなどの運動時は呼吸も止めずに行う、肩に負荷がかからないようなランニングフォームにするなどの対処も効果的です。