筋筋膜性腰痛の原因・治し方・ストレッチ~ランニング後の腰痛からの脱却~
「筋筋膜性腰痛の原因・治し方・ストレッチ~ランニング後の腰痛からの脱却~」は、走った後に腰が痛くなるランナーや、画像検査で異常がないと言われたのに腰痛が続く方のための解説サイトです。
筋筋膜性腰痛のしくみをわかりやすく説明しつつ、痛みに対する対策のポイントと、自宅でできるストレッチ・体幹トレーニング・筋膜リリースの具体的な方法を紹介し、「走りながら腰痛を改善していく」ための情報をまとめています。
筋筋膜性腰痛とは?画像に映らない「筋肉と筋膜の腰痛」
筋筋膜性腰痛は、腰の筋肉(多裂筋・脊柱起立筋など)と、それらを包む筋膜に負担がかかることで起こる腰痛です。レントゲンやMRIでは大きな異常が見つからないことも多く、「検査は問題ないと言われたのに腰が痛い」という人によくみられます。
腰痛全体の中でも頻度が高いとされる非特異的腰痛の代表格で、デスクワークや立ち仕事、ランニングなどのスポーツで、同じ姿勢や同じ動きが繰り返される人に多く発症します。

筋筋膜性腰痛の原因とメカニズム|姿勢・筋力不足・ストレスの三重奏
筋筋膜性腰痛は、次の3つが重なることで起こりやすくなります。
- 筋肉と筋膜へのオーバーユース
長時間の座位や中腰での作業、前かがみ姿勢、重い物の持ち上げなどで、腰部の筋肉と胸腰筋膜に微細な損傷と炎症が繰り返し起こります。スポーツでは、ランニングやゴルフなど「前傾+ひねり+反復」が多い動作が典型的な負担源です。 - 血流低下と発痛物質の蓄積
緊張が続いた筋肉は血流が悪くなり、乳酸などの老廃物や発痛物質がたまりやすくなります。その結果、重だるい痛みや張り感、こわばりとして自覚されます。 - 筋膜の硬さと滑走不全
胸腰筋膜は神経が豊富で、硬く厚くなると筋肉同士の滑りが悪くなり、動かしたときにツッパリ感や鈍い痛みが出ます。慢性化するほど、この「動かすと痛い・張る」という状態が続きやすくなります。

筋筋膜性腰痛の症状チェック|ヘルニアとの違い
次のような症状が複数当てはまるとき、筋筋膜性腰痛の可能性が高くなります。
一方で、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では「脚のしびれ」「力が入りにくい」「長く歩けない」といった神経症状が目立つことが多く、腰だけでなく下肢の症状が強い場合には別の病気も疑う必要があります。
危険な腰痛サイン|すぐ受診したいケース
「筋肉痛だろう」と自己判断してよい腰痛ばかりではありません。次のようなサインがある場合は、早めに整形外科などでの精査が必要です。
上記のようなサインが否定され、画像検査でも重大な異常が見つからず、前かがみや同一姿勢での鈍い痛みが主体であれば、筋筋膜性腰痛として保存的治療とセルフケアを進めていきます。
筋筋膜性腰痛の治療方針|安静より「動きながら治す」
かつては「腰痛=安静」と考えられていましたが、現在の腰痛診療ガイドラインでは、可能な範囲で日常生活や活動性を維持した方が予後が良いとされています。
- 完全なベッド安静は基本的に不要
痛みが強い数日間は、無理なスポーツや重労働を避けつつ、歩行や家事など「痛みが大きく悪化しない範囲の活動」を続けることが勧められます。 - 薬と物理療法で痛みをコントロール
NSAIDsや筋弛緩薬、温熱療法などで痛みと筋緊張を抑え、動きやすい状態を作ったうえで、運動療法・姿勢指導・生活習慣の修正を行うのが標準的です。
筋筋膜性腰痛に対する自宅でできるストレッチと筋トレ|痛みを悪化させない範囲で
痛みが「安静時は軽く、動き出しで少し痛いが慣れてくる」レベルになったら、自宅での運動療法が再発予防に大きな効果を発揮します。
基本ストレッチ(各5〜10秒×数回)
- 仰向け膝抱えストレッチ
仰向けで片膝、次に両膝を胸に近づけ、腰背部をやさしく伸ばします。反動をつけず、呼吸を止めないことがポイントです。 - 腰回旋ストレッチ
仰向けで膝を曲げ、肩を床につけたまま膝を左右に倒して腰を回旋させます。痛みが出る側には無理に倒さず、気持ちよく伸びる範囲で止めます。 - 猫のポーズ(キャット&カウ)
四つ這いで背中を丸める→反らすを繰り返し、脊柱全体を滑らかに動かします。痛みの出る方向に深く入りすぎないことが大切です。
ストレッチで痛みが増える、しびれが出る場合は、その種目や可動域は中止します。
軽い体幹・股関節トレーニング
- 体幹(多裂筋・腹横筋)
腹式呼吸でお腹をふくらませたり凹ませたりして腹圧を高める練習や、おへそを覗き込む軽いクランチで、インナーマッスルを意識します。
四つ這いで片手・片脚を伸ばすバードドッグは、腰を反らさず骨盤を水平に保つことで、多裂筋と殿筋を効率よく鍛えられます。 - 股関節・殿筋
仰向けのヒップリフト(お尻持ち上げ)や、横向きで膝を開くクラムシェルで殿筋・中殿筋を強化すると、骨盤のブレが減り腰への負担が軽くなります。
筋膜リリースのコツ|やり過ぎ注意で「気持ちいい」強さに
筋筋膜性腰痛では、筋膜リリースやセルフマッサージも有効な選択肢です。ただし、強すぎる圧は逆効果になることがあります。
- 道具:テニスボール・フォームローラーなど
- 方法:腰やお尻の気になるポイントに当て、体重を少し預けて「イタ気持ちいい」程度の圧で20〜60秒キープします。
- 狙う場所:胸腰筋膜〜脊柱起立筋、多裂筋周囲、殿筋・中殿筋、大腿後面など硬くなりやすい部分を中心に行います。
翌日まで押した場所が強く痛むようであれば、強さや時間を減らしましょう。
筋筋膜性腰痛の日常生活での予防|座りっぱなし・前かがみをためこまない
筋筋膜性腰痛は、「使い過ぎ+使わなさ過ぎ」の両方で悪化します。以下のポイントを意識すると再発リスクを減らせます。
- 同じ姿勢を続けない
デスクワークや運転は30〜60分ごとに一度立ち上がり、軽く腰を反らしたり、その場で歩いたりして血流を保ちます。 - 物の持ち上げ方を見直す
腰だけ曲げて前屈するのではなく、膝と股関節を曲げてしゃがみ、荷物を体に近づけてから持ち上げるようにします。 - 有酸素運動を味方にする
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、腰痛の改善と再発予防に役立つとされています。痛みの程度に応じて、強度・時間を調整しながら継続することが大切です。
ランナー向けQ&A|走ってもいい?どこまでOK?
Q1. ランニングで筋筋膜性腰痛が起こりやすい理由は?
骨盤の前傾・後傾の崩れや体幹・殿筋の筋力不足、ストライドの出し過ぎなどで、腰部の筋肉と筋膜に反復ストレスが集中しやすくなるためです。特に長距離走や坂道、スピード練習は、多裂筋や腰方形筋をオーバーユースさせやすいとされています。
Q2. 腰が痛いとき、どこまで走っていい?
痛みが軽く、走行中〜24時間後の痛みが「10段階中2以下」で、翌日に悪化していない場合は、ペースを落として継続可とする指標がよく用いられます。
痛みが3以上になる・翌日に明らかに増す場合は、距離とペース、坂道やポイント練習などをまず3割程度カットするのが安全です。
Q3. どの筋トレがランナーの腰痛予防に有効?
体幹深層筋(多裂筋・腹横筋)と殿筋・中殿筋の強化が重要です。バードドッグ・プランク・ヒップリフト・クラムシェルなどで「骨盤と腰がブレないフォーム」を作ることが、ランニング由来の筋筋膜性腰痛予防につながります。
Q4. シューズやフォームも関係ある?
過度なヒールストライク、ピッチが少なくストライドだけ長いフォームは、腰への衝撃を増やす要因とされています。適度なクッション性と安定性のあるシューズを選び、ミッドフット寄りの接地とやや高めのピッチを意識すると、腰部への負担を減らせます。
筋筋膜性腰痛と「ぎっくり腰」の違いQ&A
Q1. 筋筋膜性腰痛とぎっくり腰は別物?
ぎっくり腰(急性腰痛症)の多くは、筋筋膜性腰痛の急性型と考えられています。何かの動作をきっかけに筋肉や筋膜に急なストレスがかかり、強い痛みと筋スパズムが起こった状態です。
Q2. 痛みの出方の違いは?
慢性的な筋筋膜性腰痛は、動作時痛や同じ姿勢での重だるさが徐々に出てくることが多いのに対し、ぎっくり腰は「ある瞬間に突然の激痛」が特徴です。ただし、ぎっくり腰が落ち着いた後に、慢性的な筋筋膜性腰痛へ移行することも少なくありません。
Q3. 対処法はどう違う?
ぎっくり腰直後は、痛みの強い動きを避けつつ、許容範囲での歩行など軽い活動を行う点で共通しています。
痛みが落ち着き始めたら、体幹・殿筋の筋トレやストレッチで再発予防を行うという意味でも、筋筋膜性腰痛の治療と大きく方向性は変わりません。
Q4. どちらにしても受診が必要なタイミングは?
強い痛みが2週間以上続いて改善しない、脚のしびれや脱力が出てきた、排尿・排便の異常がある、発熱や夜間痛が強い――こうした場合は、筋筋膜性かぎっくり腰かを問わず、早期の医療機関受診が推奨されます。